2016年2月19日 第125回サイエンスカフェ
遺伝子検査の現状と課題 ~自分の遺伝子を知る意義と意味~
鈴木 洋一 東北大学東北メディカル?メガバンク機構 教授
川目 裕 東北大学東北メディカル?メガバンク機構 教授
プロフィール
臨床遺伝専門医?指導医。1982年東北大学医学部卒。1988年東北大学大学院医学系研究科小児科学修了。1989年東北大学大学院医学系研究科遺伝病学分野助手、1995年インディアナ大学医学部分子生物学ポストドクトラルフェロー、2002年東北大学大学院遺伝病学分野講師、2004年千葉大学大学院公衆衛生学准教授を経て、2012年9月より東北メディカル?メガバンク機構人材育成部門教授着任。 専門は、遺伝疫学、臨床遺伝学。
プロフィール
小児科専門医、臨床遺伝専門医?指導医。1986年東京慈恵会医科大学医学部卒業。 2000年、信州大学附属病院遺伝子診療部、2002年、長野県立こども病院。2009年からお茶の水女子大学、2013年より東北大学東北メディカル?メガバンク機構人材育成部門遺伝子診療支援?遺伝カウンセリング分野。また、東北大学大学院公衆衛生学専攻の教育コースにて認定遺伝カウンセラーの育成指導にあたる。専門は小児臨床遺伝学、遺伝カウンセリング。
開催情報
開催日:2016年2月19日(金)18:00~19:45
会場 : せんだいメディアテーク
概要
遺伝子を調べて病気の診断や治療法の選択に役立てることが始まっています。一方、インターネットにおいても簡単に遺伝子検査を受けられるようになっています。今回、遺伝子の検査の進歩と現状を紹介しながら、遺伝子を調べることの意義やその意味を考えます。
Q&A
Q.遺伝子を活性化するにはどうしたらいいか?
遺伝子にもいろいろな種類があるので、それぞれ種類によって異なりますが、たとえば、ヒートショック蛋白の発現を増やすには、細胞の温度を上げたり、細胞周辺のpHを変えたりして、細胞の環境の変化を与えル方法があります。また皮膚を構成している細胞内のDNA修復蛋白の発現を増やしたければ、紫外線に当たれば、DNAに傷がつくので確実に増えます。
Q.スポーツの能力において遺伝要因と環境要因の閉める割合と相互作用はどれくらいあるのか?
スポーツの能力と関連する遺伝子もわかり始めてはいますが、まだ断片的な知識を集めている状態にすぎません。瞬発系か持久力系に影響を与えるACTN3遺伝子、高山での活動や水泳選手に有利かどうかと関係するACE遺伝子など、いろいろあるようですが、環境要因(練習量、栄養)などが「どの程度」かかわるのか、正確な数字は出ていないのが現状です。
Q.犯罪を起こす可能性が高いか低いかを決定する遺伝要因と環境要因の割合とその相互作用はどの程度なのか?
犯罪を起こしやすい傾向を示す遺伝子としてMAOA遺伝子の話があります。衝撃的行動が多く犯罪行為が多い男性がいる家系でみつかった変異が見つかったが、それを持っているだけで犯罪を起こすわけではなく、その中で小児期に虐待を受けている場合に限ってその変異の影響が認められることになるとのことです。デンマークでの調査では、善良な家族から善良な家族へ養子に出された子が法的問題を起こした割合は13.5%、養子を受け入れた家族に犯罪者が含まれているとその割合は14.7%だった。一方犯罪者の家族の子が善良な家族へ養子に出された場合は20%、実父母と養父母の両方が犯罪者だった場合は24.5%だったという結果があります。この結果は、遺伝的な要因で犯罪を起こす傾向が影響をうけていると解釈できます。 ただ一番条件の悪い情況でも75%は法的問題を起していない子が生まれているという ことですので、犯罪者の子だから、絶対犯罪を犯すと決め付けるのは大きな誤解となります。この手の研究では、遺伝的要因と環境要因(教育、家庭内人間関係など)を分離して解析できているかよく吟味しないと、解釈を誤る可能性があります。
当日の様子