2018年4月27日 第151回サイエンスカフェ
土砂災害入門~斜面はなぜ崩れるのか?~
講師:森口 周二 東北大学災害科学国際研究所 准教授
プロフィール
福井県出身。2005年岐阜大学大学院博士後期課程修了(博士(工学))。東京工業大学特別研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)、Stanford大学訪問研究員、岐阜大学助教を経て、2013年4月より現職。
開催情報
開催日:2018年4月27日(金)18:00~19:45
会場 : せんだいメディアテーク
概要
毎年のように発生する土砂災害。なぜ崩れるのか?どんなときに発生しやすいのか?どんな対策が進められているのか?どうすれば命を守れるのか?参加者の皆さんと一緒に議論したいと思います。
Q&A
Q. 国道48号線&釜房ダム周辺土砂災害可能性は
A. お考えの道路や地域に限らず,道路沿いに斜面が多くある地域では,どうしても土砂災害のリスクが高くなります.川崎町のホームページでも,よく考えられた防災マップが用意されています.是非ご確認ください.
Q. 栗原のくずれは話しに入ってなかったがどうしてですか?
A. 2008年岩手?宮城内陸地震によって発生した荒砥沢ダム上流の大規模地すべりのことかと推察します.今回は,土砂災害に関する一般的な情報の紹介に時間を割きましたので,事例紹介が十分でなかったかもしれません.確かに,宮城県の土砂災害を語る上で重要な事例かと思います.
Q. 斜面はなぜ崩れるのか?
A. メカニズムについては,少し講演の中でご説明いたしましたが,もう少し根本的な議論をするとすれば,私も専門家でありながら,この問いに答えるのは非常に難しいです.現代の科学では,リスクが高そうだというところまでは分かっても,本当に崩れる斜面と崩れない斜面を事前に予測することは極めて難しいのが現状です.防災?減災を考える上で,このような現代科学の限界を知るということは,極めて重要なことだと思います.
Q. 線状降水帯についてのある判断…
A. ご質問の意図が分かりませんが,線状降水帯に対して何かの判断をするのは非常に難しいことだと思います.細長いが故に,ずっと同じ場所に集中的に雨を降らすこともあれば,そのすぐ隣町ではほとんど雨が降っていないというおかしな状況が発生することがあります.つまり,リスクが予想以上に高くなったり,突然リスクが急上昇したりするという状況が発生します.このような予想外の事態に出来るだけ柔軟に対応できるように,常日頃から防災情報に慣れ親しんでおく必要があると思います.
Q. 東日本大震災にも云われたことですが、想定外の想定といったものはどの程度までいってますか(追求されているのか?)
A. なかなかにお答えするのが難しいご質問です.想定した時点で想定外が生まれますので,どこまで行っても終わりのない話かと思います.ただ,東日本大震災以降,様々な分野で予想外の事象に対する対処に関する議論が加速化したことは確かです.例えば,構造物に関しては,部分的に破壊してもある程度の機能を保ち続けられる「ねばり」に関して活発な議論が展開されています.また,確定値で議論するのではなく,確率の概念を導入して構造物の設計を考えるという方針も重視されるようになってきています.
当日の様子