2011年 | プレスリリース
顕著な抗がん作用を示す海洋天然物の完全化学合成
がんは日本人の死亡原因第一位の疾患であり、その効果的な化学療法の開発は、社会的要請が極めて高い重要な課題です。海洋生物が生産する二次代謝産物注1(海洋天然物)の中には、ユニークな作用機序で、顕著な抗がん作用を示す化合物が多く見いだされていることから、画期的な抗がん剤のシードが海洋資源に求められています。しかし、海洋天然物の多くは微量成分であり、海洋資源の乱獲は生態系への悪影響が懸念されるため、詳細な薬効評価や薬剤開発には化学合成による実用的な化合物供給法の開発が必要です。
このたび、東北大学大学院生命科学研究科生命構造化学分野の不破春彦准教授、佐々木誠教授のグループは、奄美大島で採取された海綿より抽出されたマクロリド化合物イグジグオリドの効率的な完全化学合成(全合成)を世界に先駆けて達成しました。さらに、東北大学大学院医学系研究科および財団法人癌研究会癌化学療法センターとの共同研究により、イグジグオリドがヒト肺がん細胞の増殖を顕著に抑制することを初めて明らかにしました。今後、化合物の構造最適化や作用機序の解明により、日本発の画期的な抗がん剤の開発や、新たな創薬ターゲットの発見に結びつく可能性があります。本研究成果は、欧州総合化学誌Chemistry—A European Journalに2011年1月25日付(日本時間)で発表されました。
(問い合わせ先)
<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科生命構造化学分野准教授
不破 春彦(ふわ はるひこ)
Tel:022-217-6214
E-mail: hfuwa*bios.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えて下さい)
東北大学大学院生命科学研究科生命構造化学分野教授
佐々木 誠(ささき まこと)
Tel:022-217-6212
Email: masasaki*bios.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えて下さい)
<特許、技術移転に関すること>
株式会社東北テクノアーチ技術移転マネージャー
水田 貴信(みずた たかのぶ)
Tel:022-222-3049
E-mail: mizuta*t-technoarch.co.jp (*を@に置き換えてください)