2013年 | プレスリリース
マウスの超音波発声に対する遺伝および環境要因の相互作用:父親の加齢や体外受精が自閉症のリスクとなるメカニズム解明への手がかり
近年、先進国では自閉症の発症率の増加が社会的問題となっています。これまでの疫学研究により、父親の高齢化や体外受精(IVF)はその子供における自閉症の発症率を増大させることが報告されています。また、脳の発生発達に重要な因子として知られるPax6は自閉症発症にも関わる可能性が指摘されています。東北大学大学院医学系研究科の大隅典子教授らは、マウスにおいて自閉症様症状の指標とされる超音波発声(USV)コミュニケーションに着目し、父親の高齢化が仔における自閉症様症状の発症率を増大させることを明らかにしました。母仔分離した際に仔マウスが発するUSVのコール数を生後6日目の時点において5分間測定したところ、12ヶ月齢以上の高齢野生型父マウスに由来する仔マウスでは、3ヶ月齢の野生型父マウス由来のものと比較して、著しいUSV数の減少が認められました。次に、Pax6遺伝子変異と加齢の関係を調べたところ、3ヶ月齢のPax6変異父マウス由来の仔マウスでは、同腹の野生型仔マウスに比してUSV数が変わらなかったものの、6-8ヶ月齢のPax6変異父マウス由来の仔マウスではUSV数が著しく減少していました。さらに、Pax6遺伝子変異とIVFの関係を調べたところ、3ヶ月齢の若齢Pax6変異父マウス由来仔マウスでは、同腹の野生型仔マウスに比してすでにUSV数が著しく減少していました。この所見は生物学的観点から、父親の高齢化が、その子供に対して自閉症発症リスクを上昇させる可能性が高いこと、遺伝的に子どもの自閉症発症のリスクのある父親の場合に、加齢やIVFの影響が相乗効果を生み出すことを示唆するものと考えられます。今後、マウス精子形成過程におけるエピゲノム的変化を解析することにより、親の環境?遺伝的因子が仔に影響を及ぼすメカニズム解明の手がかりになると考えられ、仔マウスのUSV数に影響するエピゲノム変化を明らかにすることにより、自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます。
本研究成果は、本年、京都において開催されるNeuro2013において6月22日に発表されます。
[問い合わせ先]
東北大学大学院医学系研究科?発生発達神経科学分野
教授 大隅典子(おおすみ のりこ)
電話番号:022-717-8203
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[報道担当]
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
講師 稲田 仁(いなだ ひとし)
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