2016年 | プレスリリース?研究成果
海底観測で捉えた海溝近傍のスロースリップ-スロースリップ発生域は、津波地震の震源域?-
国立大学法人京都大学防災研究所の伊藤喜宏准教授、国立大学法人東京大学地震研究所の望月公廣准教授、国立大学法人東北大学の日野亮太教授らは、アメリカのテキサス大学オースティン校、コロンビア大学、ニュージーランド地質?核科学研究所、カリフォルニア大学サンタクルーズ校およびコロラド大学ボルダー校らと共同で、ニュージーランドの北島東方のヒクランギ沈み込み帯で発生するスロースリップを海底に設置した機器で観測することに成功しました。
スロースリップは、ゆっくり地震の一種で通常の地震と比べてゆっくりと破壊が進行する現象です。東北地方太平洋沖地震直前にも、スロースリップは観測され、スロースリップ域が本震時に再び大きくずれ動くことで甚大な津波被害の一因にもなりました。一般に沈み込み帯の浅部(海溝付近)で発生するスロースリップの観測は困難なため、スロースリップそのものの理解は未だ不十分です。本研究チームは、アメリカ?日本?ニュージーランドによる国際共同研究として、ヒクランギ沈み込み帯において海底圧力計を用いた海底地殻変動観測を実施し、2014年9月に発生したスロースリップを観測することに成功しました。解析の結果、これまで陸上の観測網から推定されていたスロースリップの断層より海側の浅い部分までスロースリップの断層が広がっていることがわかりました。
この結果は、従来、プレートの沈み込みに伴い歪を蓄積できないと考えられていた沈み込み帯浅部のプレート境界において、地震を起こしうる歪が蓄積されている可能性を示します。今後、沈み込み帯沿岸部の地震発生ポテンシャルを評価する上で重要な成果です。本成果は、米国科学誌「Science」に5月6日付け(日本時間)で掲載されました。
ニュージーランドのヒクランギ沈み込み帯(B)に設置された海底圧力観測網(A)と陸上GNSS観測点で観測されたスロースリップによる地殻変動(C)。解析には緑色の位置に設置された海底圧力計の記録と陸上GPS観測点の記録を併せて用いた
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