2016年 | プレスリリース?研究成果
遺伝性不妊の宿主に感染細菌が卵を復活させる仕組みを解明-ショウジョウバエでの研究成果-
約半数の昆虫に感染しているとされるボルバキアという共生細菌は、感染している母虫の卵に入り込んで、宿主の次世代へと伝わっていきます。雄の宿主からは伝搬しません。そのためボルバキア菌は、感染した雌が繁殖上有利になるよう、様々な戦略で宿主を操作します。たとえば、宿主の雄をことごとく雌に性転換させる、雄を全て殺す、雌の単為生殖を可能にする、非感染雌との交尾では受精が起こらないようにする、など実に多彩です。しかし、なぜボルバキア菌にこんな宿主操作ができるのか、従来全く不明でした。
このたび東北大学大学院生命科学研究科の山元大輔教授?大手学研究員らは、生殖幹細胞がなくなり卵細胞が失われて雌が不妊になるショウジョウバエ突然変異体、Sex-lethal (Sxl)を宿主に用い、ボルバキア菌が感染することによって生殖幹細胞が復活する仕組みを明らかにしました。ボルバキア菌は、本研究でTomO(友)と命名した新奇タンパク質を分泌し、宿主のnanosという遺伝子のメッセンジャーRNAに働きかけて幹細胞維持因子、Nanosタンパク質を増やすことにより、生殖幹細胞を変異体に復活させるのです。この成果は、細菌による宿主操作の機構解明の第一歩となるばかりでなく、妊性制御への新しいアプローチを提供するものです。
本研究成果は、Cell Press(USA)発行の科学誌『カレント?バイオロジー』 (Current Biology) Online版で8月5日午前1時(日本時間)に発表されました。
ボルバキア菌がTomOを使いSxl変異体で生殖幹細胞の異常を回復させる仕組み
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