2016年 | プレスリリース?研究成果
安価で大容量なレドックスフローキャパシタの作製に成功-大規模蓄電用途に有力な新設計-
発表のポイント
- 活性炭スラリーを流動電極とし充放電を行う「フローキャパシタ」は、安価、長寿命で、高い安全性を有する新しいフロー蓄電デバイスとして注目されている。
- 安価で低環境負荷な有機レドックス材料を活性炭内に埋め込むことで、高い流動性と高エネルギー密度?高パワー密度を兼ね備えたスラリーの開発に成功した。
- 本研究で開発した、安価で大容量なレドックスフローキャパシタは、スマートグリッド用大規模蓄電システムへの産業応用が期待される。
概要
東北大学 多元物質科学研究所の笘居 高明講師、斎藤 颯博士前期課程学生(環境科学研究科)、本間 格教授は、有機材料のレドックス反応容量を利用して、大規模蓄電設備向けに開発されてきたフローキャパシタのエネルギー密度倍増を実現し、安価で大容量なレドックスフローキャパシタを作製することに成功しました。
出力変動の大きい再生可能エネルギーの普及に伴い、電力グリッド安定化のための大規模蓄電システムに注目が集められています。この大規模蓄電システムでは、単位電力当たりの蓄電デバイスコストの低減、長寿命性、安全性が求められます。このような要求に応えるデバイスとして、近年、水系電解液中に活性炭を分散して作製したスラリーをフローさせながら充放電を行う「フローキャパシタ」が提案されていました。このフローキャパシタは、水系電気二重層キャパシタをベースとしており、低コストで作製が可能で、高入出力特性、長寿命性に優れ、安全性が極めて高いことがその特長ですが、スラリーの容量が小さいことが実用化に向けた課題となっていました。
今回の研究では、可逆的且つ高速な充放電能を有するキノン化合物を活性炭のナノサイズ空間内に埋め込むことで、キノン化合物のレドックス反応容量の付与によるスラリーの充放電エネルギー密度の倍増に成功しました。この材料設計では、従来型スラリーの流動性と高入出力特性は全く損なわれること無く、高エネルギー密度化を実現することが出来ます。安価かつ天然資源からの合成が可能なキノン化合物を利用し、フローキャパシタのエネルギー密度の倍増を実現した、このレドックスフローキャパシタは、大容量と高入出力特性の両立が必要となる大規模蓄電システムに適することから、将来的な産業展開が期待されます。
本研究成果は、2016年12月12日(英国時間)に、英国化学会が刊行する材料化学専門誌「Journal of Materials Chemistry A」オンライン版に公開されました。
回開発したレドックスフローキャパシタの模式図
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学 多元物質科学研究所
サステナブル理工学研究センター エネルギーデバイス化学研究分野
教授 本間 格(ホンマ イタル)
Tel:022-217-5815
Fax:022-217-5828
E-mail:i.honma*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
講師 笘居 高明(トマイ タカアキ)
Tel:022-217-5816
Fax:022-217-5828
E-mail:tomai*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道担当>
東北大学 多元物質科学研究所 総務係
Tel:022-217-5204
Fax:022-217-5211