2018年 | プレスリリース?研究成果
物理法則に潜む速度限界を発見 あらゆるスケールに成立する普遍的不等式を証明
ポイント
- これまでの長年の研究の結果から「量子速度限界」と呼ばれるミクロなスケールの運動に関する不等式の存在が知られていた。
- 不確定性原理との関連から、量子力学特有の性質として長い間に渡り、ミクロなスケールでのみ成立すると信じられてきた。
- 本研究成果では、同等の不等式が我々の普段目にするようなマクロなスケールでの集団現象においても普遍的に存在する不等式であることを明らかにした。
概要
我々の身近な物理現象を記述するニュートン力学に対して、原子や分子などミクロなスケールにおいては量子力学という異なる原理が成立しています。これは、不確定性原理と呼ばれるミクロなスケールにおいて発現する特性が量子力学の形成に関わっています。この量子力学に従うミクロなスケールでの運動において、「量子速度限界」と呼ばれる制限が存在することが知られていました。この量子速度限界は長らく量子力学特有の現象であり、そういった運動の制限はミクロなスケールでのみ存在するものと信じられていました。
本研究では、量子力学の基本から見直すことで、量子速度限界の根本的起源が、量子力学特有の現象を引き起こす不確定性原理にはなく、様々な現象を記述する運動方程式に広く成立するものであることを明らかにしました。その結果、マクロなスケールにおける集団現象の振る舞いを記述する多種の方程式において様々な速度限界を発見しました。
本研究成果をきっかけに、様々な運動に関係した普遍的な原理の解明が進むことが期待されます。
本研究成果はアメリカ物理学会が発行するPhysical Review Letters誌(2018年2月9日号)で公開されます。
論文情報
TITLE:Quantum Speed Limit is Not Quantum
日本語タイトル:量子速度限界は量子力学特有の現象ではない
著者:奥山 真佳(東京工業大学 理学院 物理学系 物理学コース博士課程1年)、大関 真之(東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授)
掲載誌:Physical Review Letters
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院情報科学研究科
担当 大関 真之
電話:022-795-5846
E-mail:mohzeki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)