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量子ゆらぎが支配する2次元超伝導体の新規電子相を発見-量子計算へ向けた超伝導デバイスの実現へ-

発表のポイント

  • 電界効果により半導体単結晶表面で原子層の厚さ程度の高品質2次元超伝導体を実現した。
  • 少ない乱れと大きな量子ゆらぎのコンビネーションにより出現する、多彩な超伝導量子状態を発見し、磁場による量子状態の制御に成功した。
  • 量子計算のための超伝導素子?集積回路の基盤となる技術と知見になることが期待される。

発表概要

 東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター?物理工学専攻の岩佐義宏 教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、同研究科物理工学専攻の斎藤優 大学院生、東北大学金属材料研究所 野島勉 准教授の研究グループは、セラミック半導体の一種でかつ2次元物質と呼ばれる層状窒化物?塩化窒化ジルコニウム(ZrNCl)と二流化モリブデン(MoS2)の高品質単結晶表面にイオン液体を絶縁層として用いる電気二重層トランジスタ(EDLT)構造を作製することにより、ZrNCl及びMoS2表面に厚さ1~2ナノメートルで、乱れの極めて少ない2次元超伝導を実現しました。さらにこの2次元超伝導体に磁場を加えると、低温におけるON(超伝導状態)とOFF(絶縁体状態)という2つの極低温での量子状態の間に、さらに2つの特殊な量子状態が現れることを発見し、それら4つの量子状態を連続的に磁場で制御することに成功しました。これらの研究成果は、今後、新たな2 次元超伝導体の研究分野を開拓する上の重要な礎になるだけでなく、将来的な超高速?量子計算のための超伝導デバイスや超伝導集積回路といった最先端ハードウェアを開発する上で重要な知見になることが期待されます。

 本研究成果は、英国オンライン科学雑誌『Nature Communications』(平成30年2月22日版)に掲載されました。

 本研究は科学研究費補助金?特別推進研究(JSPS科研費JP25000003)、新学術領域研究(JSPS科研費JP15H05884)、特別研究員奨励費(JSPS科研費JP15J07681)の助成を受けて行われました。

論文情報
雑誌名:「Nature Communications」」(オンライン版 2月22日掲載)
論文タイトル:「Quantum phase transitions in highly crystalline two-dimensional superconductors」
著者:Yu Saito, Tsutomu Nojima and Yoshihiro Iwasa
DOI番号:10.1038/s41467-018-03275-z外部サイトへ

図1:塩化窒化ジルコニウムZrNClを用いた電気二重層トランジスタ構造
ZrNCl薄膜をトランジスタのチャネルに用いた電気二重層トランジスタ(EDLT)のデバイス構造の概念図。今回の実験で用いたZrNCl薄膜の厚さは約20nm。正の電圧を印加することでZrNClの表面にのみ電子が蓄積する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

○研究に関すること
東北大学金属材料研究所 准教授
野島勉
Tel:nojima*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
E-mail:022-215-2167

○報道に関すること
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
冨松美沙
Tel:022-215-2144 
E-mail:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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