2018年 | プレスリリース?研究成果
震災後の医療費自己負担免除の効果が、国民健康保険および歯科診療で大きい
東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの坪谷 透 助教、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山 祐輔 研究員らの研究グループが、東日本大震災後の宮城県の医療サービス利用の変化を明らかにしました。
東日本大震災後より、被災者の医療費自己負担を免除する施策が導入されました。同施策は、宮城県では2013年4月から2014年3月の間一時中断され、2014年4月よりその対象を縮小し再開されました。このような政策の中で、実際に、医療機関の利用状況がどのように影響をうけたかについての研究は行われておりません。そこで我々は、宮城県の毎月の医療費および受診件数(レセプト枚数)を分析し、震災後の自己負担免除施策が医療サービス利用に与えた影響を評価しました。
分析の結果、宮城県の医療サービス利用は震災後約1年にわたり増加し、その後は横ばいまたは緩やかに低下していました。医療費の自己負担が免除される制度が中断される直前には、医療機関の利用が急激に増加し、自己負担免除が中断された後には医療機関の利用は減少しました。これらの変化は、医科よりも歯科で大きく観察され、後期高齢者(自己負担原則1割)よりも国民健康保険加入者(自己負担原則2‐3割)で明確に観察されました。
本研究成果は 2018年2月に科学雑誌The Tohoku Journal of Experimental Medicineに掲載されました。
ポイント
- 東日本大震災後、宮城県の医療サービス利用は増加した。被災者に対する医療費自己負担の免除政策は、被災者の医療受診に貢献していた。
- 自己負担免除政策の影響は、医科にくらべ価格弾力性の大きい歯科で顕著だった。
- 自己負担免除政策の影響は、後期高齢者にくらべ自己負担割合が大きい国民健康保険で顕著だった。医療費自己負担が平時の適切な受診を抑制している可能性が示唆された。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター
助教 坪谷 透(つぼや とおる)
電話:022-717-7639
E-mail:tsubo828*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
総務係 堀田 さつき (ほりた さつき)
電話:022-717-8244
E-mail:den-syom*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)