2018年 | プレスリリース?研究成果
難治性疾患肺動脈性肺高血圧症の新規分子機序を解明
【発表のポイント】
〇 指定難病である肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症機序については、未だ完全には解明されておらず、早期発見のためのバイオマーカーや根本的治療薬の開発が待たれている。
〇 PAHにおいて、タンパク質セレノプロテインP(SeP)の著しい発現亢進を発見し、新規分子機序の解明と新規バイオマーカー開発の可能性を示した。
〇 薬物によるSePの抑制は複数のPAHモデル動物に対して治療効果を示し、同疾患に対する新規治療ターゲットとなる可能性を見出した。
【概要】
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明(しもかわ ひろあき)教授、佐藤公雄(さとう きみお)准教授、菊地順裕(きくち のぶひろ)医員の研究グループは、指定難病である肺動脈性肺高血圧症(PAH)の新規病因候補遺伝子?タンパク質の網羅的探索を行った結果、これまでPAHとの関連が全く示唆されていなかった新規病因タンパク質としてセレノプロテインP(SeP)を発見しました。多くの臨床検体や遺伝子改変動物を用いた解析の結果、SePがPAHの主な病変部位である肺動脈平滑筋細胞の異常な増殖を促進し、PAHの病態に深くかかわっていることを解明しました。
本研究は、発症機序に未解明な点が多く残されているPAHの分子機序の解明と共に、早期発見のための新規バイオマーカー、そして新規治療ターゲットとしてのSePの役割を解明したものであり、世界初のバイオマーカーとしての実用化、新規治療薬の開発などの臨床応用につながることが期待されます。
本研究成果は、4月10日(米国東部時間、日本時間4月11日)に米国心臓協会(American Heart Association, AHA)の学会誌であるCirculation 誌(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業、および日本学術振興会科学研究費助成金の支援を受けて行われました。
図1:肺動脈性肺高血圧症(PAH)の重症度と予後の関係
問い合わせ先
[研究に関すること]
東北大学大学院医学系研究科循環器内科
教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
電話:022-717-7152
E-mail:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
[報道に関すること]
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話:022-717-7891
FAX:022-717-8187
E-mail:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)