本文へ
ここから本文です

ニトロ化不飽和脂肪酸による自然免疫応答の制御機構の解明

【発表のポイント】

  1. ニトロ化不飽和脂肪酸(注1)が、自然免疫応答を抑制する分子機構を明らかにしました。
  2. 自然免疫応答分子STING(注2)の活性化に必要なパルミトイル化(注3)を阻害する内因性の代謝物としてニトロ化不飽和脂肪酸を同定しました。
  3. ニトロ化不飽和脂肪酸は、STINGが惹起する炎症性疾患に対する治療薬の開発に繋がることが期待されます。

【概要】

東北大学大学院生命科学研究科の田口友彦教授、東京大学大学院薬学系研究科の新井洋由教授らのグループは、デンマーク オーフス大学Christian Holm博士のグループとの共同研究で自然免疫応答分子STINGがニトロ化不飽和脂肪酸によって不活性化される分子機構を初めて明らかにしました。

本研究は、STINGの活性化に必要なパルミトイル化を阻害する内因性の代謝物を初めて明らかにした重要な報告です。本研究から、ニトロ化不飽和脂肪酸はSTINGの活性化により引き起こされる炎症性疾患に対する治療薬の開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は2018年7月30日(米国東部時間 午後3時(日本時間 7月31日午前4時)、米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」で公開されました。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構革新的先端研究開発支援事業(AMED-PRIME)「画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明」、(AMED-CREST) 「生体膜リン脂質を基軸とした医療基盤技術の開発」、および小野医学研究財団研究奨励助成金の支援を受けて行われました。

【ニトロ化不飽和脂肪酸によるSTINGの不活性化】
ウイルス感染などの刺激によって、STINGは小胞体からゴルジ体へ移行し、パルミトイル化をうけて活性化し、自然免疫応答を惹起します(左図)
ニトロ化不飽和脂肪酸は、小胞体に局在するSTINGに強固に結合し、ゴルジ体でおこるパルミトイル化を阻害します。このことによって、STINGの活性化を抑制します(右図)

【用語解説】

(注1)ニトロ化不飽和脂肪酸
1つ以上の不飽和の炭素結合をもつ脂肪酸(不飽和脂肪酸:オレイン酸やリノール酸など)にニトロ基(-NO2)が導入されたもの

(注2)STING
DNAウイルスの感染などにより活性化され、自然免疫応答を惹起するのに重要な膜タンパク質。膜貫通部位近傍に存在するシステイン残基(88番と91番)がパルミトイル化を受けることで、活性化する

(注3)パルミトイル化
タンパク質の翻訳後修飾の1種で、細胞質側に向いているシステイン残基に脂肪酸(パルミチン酸)がチオエステル結合で結合する。パルミトイル化を受けることで、膜タンパク質が会合をおこしやすくなると言われている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
教授  田口 友彦 (たぐち ともひこ)
電話番号:022-795-6676
Eメール: tomohiko.taguchi.b8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当  高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193 Fax:022-217-5704
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ