2018年 | プレスリリース?研究成果
染色体の構造変換を司るタンパク質の構造を解明
【発表のポイント】
- ヒトのヒストンシャペロンHIRA(注1)の立体構造をX線結晶構造解析によって世界で初めて解明しました。
- HIRAの三量体形成が、ヒストンやHIRAのパートナータンパク質であるCABIN1との相互作用に必須であることを発見しました。
- HIRAは転写と修復に関わる多くのタンパク質を集積して機能させる構造基盤であるプラットフォームとしての役割を担うと予想されます。
【概要】
真核生物の染色体は、ヒストンと呼ばれるタンパク質にDNAが巻き付いた「ヌクレオソーム」という基本構造の繰り返しから構成されています。真核生物の遺伝情報の継承、発現、修復にはヌクレオソームの構造変換を伴います。この構造変換には、ヒストン以外にヒストンシャペロンとよばれるタンパク質群が関わってきます。 東北大学大学院生命科学研究科の佐藤優花里助教(研究開始当時: 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 研究員)、高エネルギー加速器研究機構の千田俊哉教授、米国ペンシルベニア大学のM. Daniel Ricketts博士とRonen Marmorstein教授、仏国キュリー研究所のDominique Ray-Gallet博士とGeneviève Almouzni所長らの国際共同研究グループは、ヒストンシャペロンの一つであるHIRAがヌクレオソームの形成を制御する仕組みの一部を明らかにしました。本研究では、X線結晶構造解析(注2)によりHIRAの立体構造を解明し、またヒト細胞株を用いた実験によりHIRAの三量体形成がヒストンやHIRAのパートナータンパク質CABIN1との相互作用に必須であることを証明しました。これらの発見は、癌などの疾患の発症機構の解明とその治療法の開発に繋がると期待されます。
本研究成果は、8月6日10時(ロンドン時間、日本時間8月6日18時)に英国科学誌の「Nature Communications」(電子版)に掲載されました。
図2. HIRAの結晶(a)と立体構造(b)。三量体を構成するHIRA各サブユニットは青、黄、水色で示した。HIRAの三量体形成には851番目のロイシン(Leu851)と799番目のトリプトファン(Trp799)との相互作用が必須だった(c)。
【用語解説】
(注1)ヒストンシャペロンHIRA
ヒストンシャペロンは、ヌクレオソーム構造を形成または破壊する活性を示す酵母からヒトにまで高度に保存されているタンパク質である。ヒトのHistone regulatory factor A: HIRAは1017アミノ酸残基から成る高分子量型ヒストンシャペロンで、ヒストンバリアントH3.3をヌクレオソームへ取り込む。生体内でHIRAはパートナータンパク質であるUBN1及びCABIN1とH3.3ヒストンシャペロンHIRA複合体(H3.3 histone chaperone complex HIRA)と呼ばれる巨大なタンパク質複合体を形成している。
(注2)X線結晶構造解析
結晶にX線を照射して得られる複数のX線像を解析してタンパク質を構成する原子の立体的な配置を決定する手法。タンパク質結晶にX線を照射すると、結晶内の規則正しく並んだ分子によって回折したX線像が得られる。タンパク質の結晶を作成するには、沈殿剤、塩、pHの異なるバッファーを用いてタンパク質が結晶化する条件を探索する必要がある。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
担当 佐藤 優花里 (さとう ゆかり)
電話番号:022-217-6227
Eメール:yusato*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
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