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リモートセンシングによって観測可能な光学データによる植物の光合成速度推定方法の開発

【発表のポイント】

  • 植物の光合成は、人類を含む全ての生物のエネルギー源を供給するとともに大気CO2の吸収によって地球環境変動を緩和する役割をもつ。
  • 地球レベルでの光合成を推定するために、植物の色素クロロフィルが発する蛍光と、植物が反射する光のスペクトルを利用して光合成速度を高精度で推定する方法を開発した。
  • 本手法は人工衛星からの観測によって植物のCO2吸収力を推定する精度の向上に寄与すると期待される。

【概要】

国立大学法人東北大学大学院生命科学研究科の彦坂幸毅教授及び国立研究開発法人国立環境研究所(以下「国立環境研究所」という。)の野田響主任研究員は、葉1枚での実験を通じて、リモートセンシング注1)によって観測可能な光学データから植物の光合成速度を高精度で推定する新しい手法を開発しました。光学的指標による光合成量の推定は、これまでも多くの先行研究がありますが、本研究で開発した手法は、光合成の際のクロロフィル蛍光及び熱放散の指標を用いており、生化学的なメカニズムに基づく新しいものです。光合成は、植物が光エネルギーを利用してCO2を吸収し炭水化物を合成する反応です。より大きいスケールでは、光合成速度は陸上生態系がCO2を吸収する量や、農作物の成長量?収量を決定します。本研究で開発した手法は、地球スケールで人工衛星により観測される光学指標に応用することが可能です。今後は、この手法を用いて、本年10月29日に打ち上げられた日本の新しい人工衛星「いぶき2号」が観測するクロロフィル蛍光データから陸上生態系のCO2吸収量を推定することを予定しています。これにより、将来的に植物のCO2吸収量を広域で把握することが可能になり、パリ協定の実施に対する貢献も期待されます。

本論文は国際誌Plant, Cell and Environmentの電子版に掲載されました。本研究は文部科学省科学研究費補助金及び国立環境研究所GOSAT-2プロジェクトの支援を受けて行われました。

図1 光合成色素クロロフィルが吸収した光エネルギーのゆくえ。クロロフィルが吸収した光エネルギーの一部は光合成によって使われるが、残りは熱や蛍光となって放出される。人工衛星は光合成そのものを検出することはできないが、「いぶき」など一部の衛星はクロロフィル蛍光を検出することができる。また、熱放散へ分配されるエネルギーの量は、キサントフィルの変換を通して調節されており、異なる人工衛星(NASAのMODISセンサーなど)の観測データから得られる光化学反射指数より検出できる。本研究ではクロロフィル蛍光と光化学反射指数から推定した熱放散の両方から光合成速度を推定する手法を開発した。

【用語説明】

(注1) 人工衛星など遠隔から対象を観測する手法。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 彦坂幸毅 (ひこさか こうき)
電話番号: 022-795-7735
Eメール: hikosaka*m.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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