2018年 | プレスリリース?研究成果
福島原発事故後に原発周辺地域で捕獲された野生ニホンザルの血液?骨髄細胞の解析結果 ‐血液?骨髄細胞数が内部被ばく線量率と逆相関を示す‐
【発表のポイント】
- 福島第一原子力発電所周辺地域で捕獲された野生ニホンザルの抹消血液中の血球数と骨髄細胞数を解析し、被ばく線量率との相関解析を行いました。
- 原発周辺地域の野生ニホンザルの捕獲時の被ばく線量率の中央値は、内部被ばくが7.6μGy/日(最小1.9~最大219μGy/日)、外部被ばくが13.9μGy/日(最小6.7~最大35.1μGy/日)でした。
- 成獣において、末梢血液中の白血球と血小板数、骨髄中でこれらの血球の元となる骨髄系細胞と巨核球が内部被ばく線量率と顕著な負の相関を示すことを発見しました。
- これらの結果は、内部被ばく線量率の高い野生ニホンザル成獣における造血機能の低下を示唆し、原発事故後の周辺生物への影響を考える上で重要です。
【概要】
東北大学の福本学名誉教授、同災害復興新生研究機構の鈴木正敏助教らの研究グループは、東京電力福島第一原子力発電所事故後に原発周辺地域で捕殺された野生ニホンザルの血液中の血球数と骨髄中の血液細胞数を解析しました。その結果、内部被ばく線量率に伴って成獣個体では抹消血及び骨髄中の血球数が減少する傾向があることを発見しました。しかし、サルに目立った健康への影響は確認されていません。これらの結果は、原発事故後の周辺生物への影響報告として重要なだけでなく、低線量率の長期放射線被ばく影響の重要な基礎的データとなることが期待されます。
本研究成果は、2018年11月13日に英科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
<解説図>
成獣野生ニホンザルの骨髄画像
a:捕獲時の内部被ばく線量率4.9μGy/日、外部被ばく線量率24.8μGy/日
b:捕獲時の内部被ばく線量率74.5μGy/日、外部被ばく線量率24.9μGy/日
問い合わせ先
東北大学災害復興新生研究機構
担当 鈴木 正敏
電話 022-229-4113
E-mail masatoshi.suzuki.c7*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)