2018年 | プレスリリース?研究成果
肝臓の再生を促す仕組みを解明 - 脳からの信号が、肝臓傷害時の命を守る‐
【発表のポイント】
- 肝臓が傷害された際に脳からの自律神経による信号が緊急的な肝臓再生を促進することを明らかにした
- 神経信号が肝臓内の免疫細胞(マクロファージ)を刺激して肝臓再生を促進する仕組みを解明した
- 神経信号がないと重症肝臓傷害の際の生存率が低下することを明らかとし、また、この仕組みを促すことで生存率を回復させることに成功した
【研究概要】
東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院糖尿病代謝科の今井 淳太(いまい じゅんた)准教授、井泉 知仁(いずみ ともひと)助教、片桐 秀樹(かたぎり ひでき)教授らのグループは、肝臓が傷害された際に脳からの神経信号が緊急に肝臓再生を促す仕組みを解明しました。また、これは、肝臓が傷害された際に命を守る重要な仕組みであることも明らかになりました。
肝臓傷害時には早い時期に急速な肝臓再生が起こることが知られています。また、老化するとこの急速な再生が妨げられると考えられています。しかし、この早い時期の急速な肝臓再生にどのような意義があるのか、またそれがどのような仕組みで起こっているのかはよくわかっていませんでした。
本研究では、肝臓傷害時の急速な肝臓再生は脳からの自律神経による信号が担っていること、またその神経信号が肝臓内の免疫細胞(マクロファージ)を刺激することで強く肝臓再生を促進することを解明しました。さらに、この神経信号がないと重症肝臓傷害の際の生存率が低下することも明らかになり、この仕組みを促すことで生存率を回復させることにも成功しました。本研究によって肝臓再生の新たな仕組みが明らかとなったとともに、老化のメカニズムの解明につながるものと期待されます。今回発見された仕組みを制御することで、重篤な肝障害の治療の開発や肝臓の癌などの根治をめざした治療法への応用にもつながるものと大いに期待されます。
本研究成果は、日本時間2018年12月13日19時にNature Communications誌(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金および日本医療研究開発機構(AMED)「老化メカニズムの解明?制御プロジェクト」の支援を受けて行われました。
迷走神経はアセチルコリンという物質を分泌して肝臓内の免疫細胞(マクロファージ)を刺激することで、マクロファージからのインターロイキン6 (IL-6)の分泌を促し、IL-6が肝臓細胞内のシグナル伝達経路(FoxM1経路)を活性化して強く肝臓再生を促進する。
問い合わせ先
研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野
准教授 今井 淳太(いまい じゅんた)
電話番号: 022-717-7611
Eメール: imai*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号: 022-717-7891
FAX番号: 022-717-8187
Eメール: pr-office*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)