2019年 | プレスリリース?研究成果
微細手術に適用可能な低侵襲手術支援ロボットの開発 ~?バイオニックヒューマノイド?活用により世界最高水準のロボットを実現~
【発表のポイント】
- 産業用ロボットアームをベースとした双腕の手術支援ロボット「スマートアーム」を開発しました。
- スマートアームには、術具同士や術具と生体との衝突をロボットが自動で回避する制御など、大学?企業?病院との共同研究により開発したさまざまな最先端のロボット技術が統合されています。
- スマートアームは手術支援ロボットとして世界最高水準の性能で、経鼻内視鏡による脳外科手術など微細な領域の手術を主な対象としており、高度で困難な手術へのロボット手術適応の可能性が広がります。
【発表概要】
東京大学大学院工学系研究科光石衛教授らの研究グループは、大学?企業?病院との共同研究により、脳神経外科などにおける微細手術への適用を可能とする低侵襲手術支援ロボット「スマートアーム」を開発しました。
近年医療現場に導入されている低侵襲手術支援ロボットは、腹部を主な対象としていますが、さらにさまざまな手術への普及が期待されています。しかしながら体内の狭所?深部において非常に繊細で高度な手術を行うには、個別技術の小型化や高性能化に加えて、手術ロボットシステムとしていかに要素技術を統合するかが大きな課題でした。
本研究グループは、大学?企業?病院との共同研究により開発した要素技術を統合し、産業用ロボットアームをベースとした双腕の手術支援ロボット「スマートアーム」を開発しました。スマートアームは産業用ロボットアームをベースとした双腕の手術支援ロボットです。スマ ートアームには九州大学?(株)高山医療機械製作所?東京大学などが開発した、新たな駆動機 構により先端が屈曲する直径 3.5 ミリメートルのロボット術具が搭載されており、そのロボッ ト術具には東北大学?九州大学?東京大学が開発した微小な力センサーが搭載されています。スマートアームの研究開発は、バイオニックヒューマノイド(注1)の脳神経外科手術用モデル「バイオニック?ブレイン」を活用することで、脳神経外科医からのフィードバックを受けながら医工連携研究として実施しました。このバイオニック?ブレインを用いることで、経鼻内視鏡手術(注2)における硬膜縫合を実現できる性能も確認しました。これは手術ロボットとして世界最高水準の性能です。この研究成果により、高度で困難な手術へのロボット手術適用の可能性が大きく広がります。
本研究成果は、平成31年1月11日(金)に東京大学伊藤国際学術研究センターで開催される公開シンポジウムにおいて、研究報告を行うとともに実機や関連技術の展示を行います。
【用語解説】
注1)バイオニックヒューマノイド
内閣府総合科学技術?イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命」(プログラム?マネージャー:原田 香奈子)(https://www.jst.go.jp/impact/program/15.html)で開発中のもので、ヒトや実験動物の代わりとなるセンサー付きの精巧な人体モデルのこと。
図1. 経鼻内視鏡手術を想定したスマートアームの操作
(バイオニックヒューマノイドを用いた評価と透視イメージ)
問い合わせ先
東北大学大学院医工学研究科(兼)大学院工学研究科
教授 芳賀 洋一(はが よういち)
E-mail:haga*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)