2019年 | プレスリリース?研究成果
超高圧実験で明らかにした ウラン系エキゾチック超伝導と異常金属状態 30年間の謎であった超伝導の対称性を解明
東北大学金属材料研究所の清水悠晴助教、青木大教授は、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)の研究員ダニエル?ブレイスウェイト(Daniel Braithwaite)氏、ジャンパスカル?ブリゾン(Jean-Pascal Brison)氏らとともに、以下のことを明らかにしました。
【発表のポイント】
- ウラン系重い電子系※1化合物UBe13の風変わりな超伝導(エキゾチック超伝導体※2)の磁場中?超高圧特性を世界で初めて明らかにした。
- UBe13は常伝導相の異常金属状態※3から突如として超伝導に転移する極めて異常な物質で、その特性の詳細は30年もの間、未解明であった。
- 今回の発見は、固体物理学の超伝導基礎研究において重要な成果である。
本研究成果は、2019年2月12日付でPhysical Review Lettersに掲載されました。
【用語解説】
※1 重い電子系:希土類元素やウランなどのアクチナイド元素を含む金属化合物中に存在する電子は、局在的なf電子が低温で量子効果によって固体結晶中を動き回ります。f電子間には非常に強い斥力がはたらくため、結晶中では通常の金属よりも100倍から1000倍も遅い速度で(言い換えると、100倍から1000倍も大きな有効質量を持ちながら)ゆっくり動き回っています。超伝導は何らかの引力によって電子が対を成すことによって生じますが、電子が強い斥力を受けているにもかかわらず、なぜ超伝導引力が生じるのかを解明するため、これまでに多くの実験的?理論的研究が行われています。
※2 エキゾチック超伝導体:従来型の超伝導体のことを1957年に提唱されたBardeen-Cooper-Schriefferの理論にちなんでBCS超伝導と呼びますが、この理論では説明できない異常な超伝導をエキゾチック超伝導と呼び、その超伝導特性を理解するための研究が精力的に行われています。
※3 異常金属状態:通常の金属ではランダウのフェルミ液体理論で説明がつきますが、フェルミ液体理論では説明がつかない異常な金属状態(非フェルミ液体状態)が重い電子系化合物には多く見られ、これは熱揺らぎが抑えられる低温領域において古典物理学では説明できない量子的な揺らぎが発達しているためと考えられています。エキゾチック超伝導はそのような異常金属状態(非フェルミ液体状態)が発端となって起こると考えられ、その異常性の起源を明らかにすることがエキゾチック超伝導のメカニズムを解明する重要な手がかりになります。
図. (左上)重い電子系超伝導体 UBe13 の上部臨界磁場及び電気抵抗のべきに見られる異常金属状態。(左下)UBe13の結晶構造と、交流帯磁率及び電気抵抗のダイヤモンドアンビルセルを用いたセットアップ。(右)常圧から超高圧下約 6 GPa までの上部臨界磁場の圧力依存性。常圧では等方的なスピン三重項フルギャップ A1u 状態が実現し、6GPa に近づくにつれ、対称性の低い Eu スピン三重項状態の量子的な重なりのウエイトが大きくなる。
問い合わせ先
◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所
附属量子エネルギー材料科学国際研究センター
助教 清水 悠晴(しみず ゆうせい)
教授 青木 大(あおき だい)
Tel 029-267-3181 Fax 029-267-4947
E-mail: yuseishimizu*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
◆報道に関して
情報企画室広報班
冨松美沙
TEL:022-215-2144 FAX: 022-215-2482
Email:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)