2019年 | プレスリリース?研究成果
安定なケイ素版ケトンの合成に成功 純粋なケイ素-酸素二重結合の構造と反応性の解明
【発表のポイント】
- 純粋なケイ素-酸素二重結合を持つケイ素版ケトン(注1)を安定な結晶として取り出し、その分子構造と、反応性を実験的に明らかにした。
- 今回合成したケイ素版ケトンは、150年前から合成が追求されてきたケイ素-酸素二重結合を持つ分子で、ケイ素高分子シリコーンの単量体(注2)にあたるものでもあり、これまでその合成に必須とされてきた、ケイ素-酸素二重結合が本来持つ大きな分極を軽減させる工夫(電子的安定化)を必要としない世界初の例である。
- 地上に豊富に存在する元素(注3)であるケイ素から構成される化合物の可能性がさらに広がるものと期待される。
【研究概要】
東北大学大学院理学研究科化学専攻の岩本武明教授、石田真太郎准教授、小林良(博士課程後期2年、東北大学学際高等研究教育院博士研究教育院生2年)は、緻密な分子設計を施すことで、純粋なケイ素-酸素二重結合をもつケイ素版ケトンを安定な結晶として合成及び単離することに成功し、その分子構造とケイ素-酸素二重結合固有の高度な分極に由来する高い反応性を明らかにしました。ケイ素-酸素二重結合を持つ化合物は150年以上前から多くの化学者により追究されてきた化合物であり、今回合成した化合物は身の回りの様々なところで用いられている有機ケイ素高分子であるシリコーンの単量体に相当するものです。地上に豊富に存在する元素であるケイ素から構成される化合物の結合の理解が深まるだけでなく、これらの化合物の機能物質としての可能性が広がるものと期待されます。本研究の結果は、Wiley-VCH社の一般化学雑誌である「Angewandte Chemie, International Edition」に2019年5月17日(日本時間)にaccepted article版がオンライン掲載されました。
【用語解説】
(注1)ケトン:
炭素-酸素二重結合をもつ化合物(カルボニル化合物)の中でも炭素上に炭素置換基を持つ化合物。有機化合物の中で最も重要な官能基の一つ。
(注2)単量体:
高分子を構成する単位になる低分子化合物。ケイ素高分子であるシリコーンはR2SiOが構成単位になっている。
(注3)地上に豊富に存在する元素:
地上(地殻)で最も割合の多い元素は酸素(49.5%)であり、ケイ素はそれについて二番目に豊富な元素である(25.8%)。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科 化学専攻
教授 岩本 武明(いわもと たけあき)
電話:022-795-6558
E-mail:takeaki.iwamoto*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科 広報?アウトリーチ支援室
電話:022?795?6708
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)