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ナノの孔をもつスポンジを利用した自然冷媒で動作する高効率ヒートポンプを提案~ナノ空間の変形による気液相転移を利用~

【研究成果のポイント】

  • 柔軟に変形するナノ多孔体「ナノスポンジ」を利用することで、エネルギー効率の高い気液相転移を実現しました。
  • 気液相転移に伴い発生する潜熱を利用することで、エネルギー効率の高いヒートポンプを構築できます。
  • 従来のヒートポンプとは異なり、自然冷媒を利用してもシステムが巨大化しない利点があります。

【概要】

東北大学の野村啓太助教、山本雅納助教、我部篤助教、西原洋知准教授、京谷隆教授、日産自動車株式会社、信州大学の田中秀樹教授、京都大学の宮原稔教授、岡山大学の仁科勇太研究教授らの研究グループは、自然冷媒注1)を用いた新しいヒートポンプ注2)の原理を提案しました。現在のヒートポンプには代替フロン注3)が冷媒として使用されています。代替フロンの地球温暖化係数は二酸化炭素に比べて約千倍と非常に大きく、環境に優しい自然冷媒への切り替えが急務となっています。本研究では、柔軟に変形するナノ多孔体注4)「ナノスポンジ」に、液体状態の冷媒を含ませてから押し付けて変形させると、冷媒が蒸発して気体となって放出され、気化熱によって冷却が可能であることを見出しました。反対にナノスポンジを復元させると、気体が液体となって取り込まれ発熱します。従来とは異なり、応力による気液相転移を利用するため、冷媒には水やアルコールなどの環境に優しい物質を利用可能です。ナノスポンジは何度でも繰り返し冷媒を取り込み、放出することができる上に、ナノスポンジを押し付けるために必要な動力はそれほど大きくないため、エネルギー効率の高いヒートポンプの設計が可能となります。ヒートポンプは空調や冷蔵庫など現代社会に欠かせない機器であり、今回の発見は大きな波及効果が期待できます。

本成果は、2019年6月17日(英国時間)にNature Communications誌にてオンライン公開されました。

ナノスポンジを利用したヒートポンプの原理を簡略化した模式図

【用語解説】

注1) 自然冷媒
冷媒はヒートポンプの内部を巡り、気化と凝縮を繰り返すことで熱を運びます。現在はハイドロフルオロカーボン系の冷媒がヒートポンプに利用されていますが、地球温暖化係数が非常に大きいことが問題になっています。自然冷媒はオゾン破壊係数がゼロで、地球温暖化効果の低い冷媒の総称で、水やアルコールが含まれます。

注2) ヒートポンプ
外部からエネルギーを供給することで、温度の低いところから高いところへと熱を運ぶ機関です。空調機や冷蔵庫はこれに該当します。

注3) 代替フロン
現在のヒートポンプで広く使用されているハイドロフルオロカーボン系の冷媒です。フロンガスのようにオゾン層を破壊することはありませんが、地球温暖化係数が非常に大きいことが問題視されています。

注4) 多孔体
内部に微小な穴(細孔)を大量に含有する材料の名称です。細孔はその大きさによって、ミクロ孔(2 nm以下)、メソ孔(2~50 nm)、マクロ孔(50 nm以上)に分類されます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究関連)
東北大学 多元物質科学研究所
准教授 西原 洋知(にしはら ひろとも)
電話:022-217-5627
E-mail:hirotomo.nishihara.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道関連)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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