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神経変性疾患の発症機構理解に光! ―細胞をタンパク質の凝集から守る新しい仕組みを解明―

【発表のポイント】

  • 研究グループは、合成途上の異常タンパク質をリボソームから解離させて分解に導く新しい品質管理の詳細な仕組みを解明した。
  • 品質管理機構に異常が生じると、細胞にタンパク質凝集体が蓄積し、特にミトコンドリアの著しい機能低下が観察された。
  • タンパク質凝集やミトコンドリア機能の破綻に起因する神経変性疾患や様々な疾患の治療薬の開発に貢献すると期待される。

【概要】

東北大学大学院薬学研究科の井澤俊明助教、稲田利文教授、北海道大学大学院農学研究院の山下由衣助教、ドイツミュンヘン大学の蘇婷(博士課程院生)、Walter Neupert教授、Roland Beckmann教授らのグループは、様々な疾患の原因となる異常タンパク質を分解する品質管理の詳細な分子機構を解明しました。

細胞内で生じるエラーによりリボソームが異常停滞すると、合成途上の異常なタンパク質が作られます。細胞には、このような異常タンパク質をリボソームから解離させて分解する品質管理機構が備わっています。しかし、停滞したリボソームから異常タンパク質を解離させる詳細な分子機構は不明でした。

研究グループは、クライオ電子顕微鏡を用いたタンパク質の構造解析と生化学的手法を組み合わせ、新規の品質管理因子Vms1とArb1が協調してtRNAの分子内切断を行い、異常タンパク質を解離させる詳細な分子機構を解明しました。また、この品質管理システムが破綻すると異常タンパク質が凝集体を形成し、特にミトコンドリア機能の著しい機能低下を引き起こすことを見出しました。

細胞の持つ新たな品質管理の仕組みが分子レベルで解明され、タンパク質凝集やミトコンドリア機能の破綻に起因する遺伝病や様々な疾患の治療薬の開発に貢献すると期待されます。

この研究成果は、Nature誌の掲載(2019年6月27日)に先立ち、オンライン版にて6月12日に公開されました。

本研究は文部科学省科学研究費補助金(若手研究、新学術領域研究「新生鎖の生物学」、基盤研究A)により支援されました。

【図1】リボソーム大サブユニット上において、Vms1とArb1は協力してtRNAを切断し、合成途上の異常タンパク質をリボソームから解離させる。解離したタンパク質はプロテアソームにより分解される。

図2】Vms1の欠損細胞においては、合成途上の異常タンパク質のリボソームからの解離が遅れ、Rqc2によるCATテイルの付加が異常に亢進する。CATテイルの伸長したタンパク質は凝集体を形成し、細胞機能の破綻を引き起こす。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院薬学研究科
担当 井澤俊明
電話:022-795-6874,022-795-6876
E-mail: toshiaki.izawa.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
担当 稲田利文
電話:022-795-6874,022-795-6876
E-mail: tinada*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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