2019年 | プレスリリース?研究成果
配電損失の最適化と切替手順の同時算出が可能に 電力の発送電分離を目前に自動計算の手法開発
【発表のポイント】
- 配電系統の電力損失の最小化や各種評価指標の最適化を実現するため、電力の最適な供給経路を決定すると共に、その供給経路への切替手順を同時に算出可能なアルゴリズムの開発
- 地球温暖化対策に向けた二酸化炭素排出量削減や電力システム改革を契機とした託送コスト低減への要求が高まる中、現有設備の運用のみで実現できる方策として期待される
【概要】
東北大学と株式会社明電舎による共同研究チームは、2015年より電力系統の配電分野において研究を開始し、電力の供給経路を変更することで、配電による電力損失を最小化するアルゴリズムを開発しました(特許共同申請中)。
本アルゴリズムでは、電力の最適な供給経路を算出するだけでなく、現在の供給経路からの切替手順を同時に算出可能であり、実運用への適用までを視野に入れた手法となっております。これは、東北大学大学院情報科学研究科の周暁教授、伊藤健洋准教授、鈴木顕准教授を中心とするグループと、株式会社明電舎の電力?エネルギー事業部電力システム技術部との産学共同研究による成果です。主にアルゴリズムの研究は東北大学が、電力系統技術分野の研究は明電舎が行ってまいりました。
本研究では、配電網の日本標準モデル(*1)に対する検証実験を行い、10の58乗通り以上という天文学的な選択肢の中から最適な供給経路を選び出すと同時に、100手以上を要する切替手順を算出することに成功しています。これらの算出には、市販レベルのデスクトップパソコンを用いたとしても、数秒~十数秒しかかかりません。また、本研究の効果を日本全国規模に単純換算すると、年間で約13.7GWh(一般家庭3,800世帯分)の損失改善が期待できます。また二酸化炭素排出量6,800トン(杉の木にして49万本分)の削減効果に相当します。
地球温暖化対策に向けた二酸化炭素排出量削減や、2020年の開始目前となった電力の発送電分離に伴う託送コスト低減への要求が高まる中、本手法は現有設備の運用のみで実現できる方策として期待されます。更には、太陽光発電等の分散型電源の普及に伴って、より複雑化する配電系統の運用?管理を支援するツールとしての活用も期待されます。
【用語解説】
*1) 配電網の日本標準モデル
日本の実際の配電網に基づいて設計された実用規模の配電網データです。早稲田大学の林泰弘教授らが調査し、アルゴリズムのベンチマークテスト用として公開しています。制御可能な開閉器数468、電力の供給源数72、総需要量73-170MWh、線路容量300A、送り出し電圧6.6kV、電圧許容範囲6.3-6.9kVとなっています。
http://www.hayashilab.sci.waseda.ac.jp/RIANT/riant_test_feeder.php
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 大学院情報科学研究科
准教授 伊藤健洋
E-mail: takehiro*ecei.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道担当)
東北大学 大学院情報科学研究科 広報室
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3-09
Tel: 022-795-4529 Fax: 022-795-5815
E-mail: koho*is.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)