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体の中で細胞がスムーズに集団移動する仕組みを解明 体の器官の形づくりや傷の修復メカニズムの理解に貢献

【発表のポイント】

  • オプティカルバイオロジー※1とライブイメージング※2の手法を用いて、ショウジョウバエにおいて、体の器官を形成する上皮細胞が集団移動するのに重要な、細胞のつなぎ替えを可視化することに成功した。
  • 「ジッパー」のように機能して、上皮細胞の接着を破ることなく、細胞接着面の伸長を促進する膜たんぱく質(Sdk)を発見した。
  • 上皮細胞の集団移動をスムーズに継続させる仕組みが明らかになり、組織形成や、創傷治癒などの上皮修復メカニズムの理解に貢献することが期待される。

【概要】

東北大学大学院生命科学研究科の上地浩之(うえちひろゆき)助教と倉永英里奈(くらながえりな)教授は、上皮細胞をスムーズに集団移動させる仕組みについて、ショウジョウバエを用いた研究により明らかにし、上皮細胞が集団移動するために重要な、細胞のつなぎ替え(細胞接着面のリモデリング)過程を可視化することに成功しました。リモデリング後にできた新しい細胞接着面の伸長を促進するためには、古い細胞接着面を収縮するために使われたアクトミオシン※3が集積して再利用されることを発見しました。その集積には膜たんぱく質であるSdk(Sidekick)が必要であり、このSdkが「ジッパー」のように機能することで上皮に穴を空けることなく、新しい細胞間接着の伸長を促進していることが明らかになりました。

本研究の成果は、上皮組織の形態形成の原動力となる細胞機能の解明であり、創傷治癒などの上皮修復メカニズムの理解にも貢献することが期待されます。

本研究結果は、米科学誌「Developmental Cell」の電子版(2019年7月25日付)で発表された後、8月5日発行の同誌に掲載されます。

図1:右に傾いた細胞接着面のつなぎ替えが連続しておこることで、細胞を同一方向に集団移動させるメカニズムの模式図(Sato et al., Nat Comm 2015より図を改変)。(左)アクトミオシンが集積した細胞接着面が赤矢印方向につなぎ替わることで、黒矢印方向に組織が伸長しようとすると圧力が加わる。(右)頭部に動かない細胞層を配置することで、水色矢印のような細胞のつなぎ替えが起こり、片側への細胞移動が誘導される(灰色矢印)。

【用語解説】

※1 オプティカルバイオロジー:
特定の波長の光を当てることで特定のタンパク質の活性を変化させ、狙った細胞の機能を光で制御する方法。本研究では、その手法の1つであるCALI法(Chromophore-assisted laser inactivation)を用いた。CALI法では、光刺激によりReactive oxygen species(ROS)を産生する蛍光たんぱく質を、不活性化させたいたんぱく質Xに融合させて発現させることで、光特異的にたんぱく質Xを不活性化させる。

※2 ライブイメージング:
生きた細胞のさまざまな活動を継時観察すること。特にGFPなどの蛍光マーカーを用いて特定の細胞や組織を標識し、蛍光顕微鏡でその動きや変化を詳細に観察することができる。今回は生きた個体において生きた細胞を観察した。

※3 アクトミオシン:
アクチン繊維にミオシンたんぱく質が結合した複合体。筋肉や細胞骨格の収縮に必須。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 倉永 英里奈 (くらなが えりな)
電話番号: 022-795-6709
Eメール: erina.kuranaga.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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