2019年 | プレスリリース?研究成果
藻類のオイル生産を制御する因子を同定 -有用脂質生産の自在制御に向け大きな一歩-
【要点】
- 藻類はリンや窒素などの欠乏時に細胞内にオイルを高蓄積
- 藻類で栄養欠乏時に起こるオイルの高蓄積を制御する制御因子を発見
- 制御因子の改変により、オイル生産を自在に制御する仕組みへの活用に期待
【概要】
東京工業大学 生命理工学院のNur Akmalia Hidayati(ヌル アクマリア ヒダヤティ)博士後期課程3年、堀孝一助教、太田啓之教授、下嶋美恵准教授、岩井雅子特任助教と京都大学 福澤秀哉教授、東北大学 大学院情報科学研究科 大林武准教授、かずさDNA研究所 櫻井望チーム長(現所属?国立遺伝学研究所)らの研究グループは、バイオ燃料をはじめとする有用脂質生産に活用が期待される藻類の一種「クラミドモナス」(用語1)で、リンや窒素の栄養欠乏時に起こるオイルの蓄積を制御する因子の同定に成功しました。またこの制御因子は、特に栄養欠乏時の細胞内にオイルが大量に蓄積する時期に機能する主要な制御因子であることも突き止めました。
今回、種々の藻類で広く見られる栄養欠乏時のオイルの大量蓄積を制御する制御因子を見出したことで、明らかになった脂質蓄積の制御の機構や制御因子自体を、藻類で生産する有用脂質の種類や生産の時期を自在にコントロールするための仕組みづくりに活用することが期待されます。
藻類はリンや窒素などの栄養欠乏時に細胞内にオイルを多量に蓄積することが広く知られています。この仕組みの解明が藻類で様々な有用脂質を自在に生産するための大きな手掛かりになると考えられていました。
研究成果は7月27日発行の英国科学雑誌「プラント ジャーナル(The Plant Journal)」に掲載されました。
(注)この研究は、科学研究費基盤研究A、科学技術振興機構 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA) 「ゲノム編集による革新的な有用細胞?生物作成技術の創出」研究領域(研究総括:山本卓(広島大学教授))における研究の一環として行いました。
図1. LRL1変異体ではリン欠乏時の生育が抑制される。
上図:LRL1の二つの変異体、lrl1-1、lrl1-2 のタグ挿入部位、下図:リン欠乏時の培養の様子。
lrl1-1、lrl1-2では、いずれもリン欠乏時の細胞の増殖が抑制され、培養液がやや薄緑色になる。
【用語解説】
(用語1) クラミドモナス:モデル藻類として様々な研究に用いられる単細胞性の緑藻。窒素やリンの欠乏時に細胞内にデンプンとオイルを多量に蓄積することから、栄養欠乏時のオイル蓄積の研究のモデルとしても広く用いられている。
問い合わせ先
東北大学大学院情報科学研究科
准教授 大林 武
Email: obayashi*ecei.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
TEL: 022-795-7161 FAX: 022-795-7179
<取材申し込み先>
東北大学大学院情報科学研究科 広報室
Email: koho*is.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
TEL: 022-795-4529 FAX: 022-795-5815