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口腔内細菌によるアセトアルデヒド産生 その産生機構と代謝的特徴の解明

【発表のポイント】

  • 近年、口腔内細菌によって産生されるアセトアルデヒドが口腔がん発生リスク増加に寄与することが示唆されており、注目を集めている。しかし、その産生機構や代謝的特徴は不明であった。
  • 本研究を通じ、口腔常在細菌によるアセトアルデヒド産生に関連する代謝機構、さらには口腔環境因子がその産生に及ぼす影響が明らかになった。これらの知見は、口腔内細菌によるアセトアルデヒド産生活性の評価法やその低減法の開発等に寄与することが期待される。

【概要】

東北大学大学院歯学研究科口腔生化学分野の髙橋信博教授、鷲尾純平講師および同研究科口腔システム補綴学分野の互野亮歯科医師らの研究グループは、口腔常在細菌のアセトアルデヒド産生に関与する口腔環境因子やその産生メカニズムを明らかにしました。

近年、口腔内細菌がグルコースやエタノールから発がん性を持つとされるアセトアルデヒドを産生すること、またそれが口腔がん発生のリスク因子となっていることに注目が集まっています。しかしながら、それらのアセトアルデヒド産生に関わる詳細な代謝機構や、その産生に対する口腔環境因子による影響は不明でした。

今回、アセトアルデヒド産生能を持つことが知られている複数の口腔常在細菌(口腔レンサ球菌属および口腔ナイセリア属)を用いて、口腔内環境を想定した各条件下にて、エタノールやグルコースを基質としてアセトアルデヒドおよび他代謝産物の産生量を測定したところ、エタノールからのアセトアルデヒド産生が高く、さらに、好気環境かつ弱アルカリから中性pHの環境下にて、その産生が増加したことが明らかになりました。また、エタノールは好気環境でアルコール脱水素酵素によって酸化されてアセトアルデヒドになり、生じた酸化力はNADHオキシダーゼで処理されることで、効率的に代謝が進むことが推測されました。

口腔常在菌として健康な口腔内に多く生息する細菌種から高いアセトアルデヒド産生能が確認されたこと、さらに、このアセトアルデヒド産生は、健康な口腔環境で想定される環境条件で高くなったことから、健康的な口腔内細菌叢においてエタノールからアセトアルデヒドが産生されやすいこと示唆します。本研究は、口腔内細菌がアセトアルデヒド産生を介して発がんにも関わる可能性を支持するものであり、口腔内細菌が関与する口腔がんリスクの評価法や低減法の開発にも寄与することが期待されます。

本研究成果は、令和元年7月18日付でScientific Reports誌に掲載されました。

図 1 本研究の概要

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 
口腔生化学分野
教授 髙橋 信博(たかはし のぶひろ)
講師 鷲尾 純平(わしお じゅんぺい)
電話 022-717-8294 / 022-717-8295
E-mail:OEB*dent.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
総務係
電話 022-717-8244
E-mail:den-syom*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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