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グラフェンの新しい合成法 ~亜臨界水熱電解によるグラフェンと水素の同時生成~

【発表のポイント】

  • 電気分解によるグラフェン※1合成に世界で初めて成功
  • 亜臨界水※2中で酢酸を電気分解すると陰極表面にグラフェンが成長
  • グラフェンと水素の同時生成
  • 太陽電池電力で、バイオマス等から、付加価値の高いグラフェンと水素を同時に製造するグリーン化学プロセスの創出が期待

【概要】

東北大学多元物質科学研究所 笘居高明 准教授、本間格 教授、東北大学学際科学フロンティア研究所 中安祐太 助教らは、亜臨界水反応場を適用することで、電気分解によるグラフェン合成に世界で初めて成功しました。

グラフェンは、近年、透明導電膜、エレクトロニクス部材、電池電極向けの導電助剤など様々な分野で実用化研究が進められています。しかし、炭素原子を含む原料を分解し、炭素原子を組み上げてグラフェンを合成するボトムアップ合成法は、CVD法 (Chemical Vapor Deposition, 化学的気相合成法)、SiC (シリコンカーバイド)分解法に限定されていました。今回、電気分解法によりグラフェンが合成できるプロセスが発見されたことで、グラフェン合成に新たな選択肢が加わることになります。

さらにこの手法では、様々な有機物からグラフェン合成が可能です。また、グラフェンの形成と同時に水素が生成することから、"太陽電池や風力発電等の再生可能電力を利用して、バイオマス資源や天然ガスなどから、クリーンエネルギーである水素と高機能性カーボンであるグラフェンを同時製造する、経済性の高いグリーン化学プロセス"の創出に繋がることが期待されます。

本研究成果は主に、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究A?炭素循環コプロダクション型水素製造システムの研究?により得られました。11月18日付で、Elsevier 社の国際誌「Carbon」オンライン版に掲載されました(DOI: 10.1016/j.carbon.2019.11.052)。

図1 白金陰極を覆う水熱電解法により合成されたグラフェンのSEM(走査型電子顕微鏡)像
(グラフェンと白金の熱膨張係数の差に由来する「しわ(wrinkle)」が見える)

【用語解説】

注1)グラフェン
グラファイト(黒鉛)結晶の単層分。炭素原子が蜂の巣状に6角形ネットワークを組んで2次元シートを形成している。高い電気伝導性、熱伝導性、機械的強度を有する。単原子層(単層)グラフェンが数層重なった多層のものもグラフェンと呼ぶ。

注2)亜臨界水
臨界点(水の場合は374℃、22MPa)以上の温度、圧力条件にある物質は、液体とも気体とも区別できない超臨界流体と呼ばれる状態となる。臨界点よりもやや低い温度、圧力条件にある液体状態は、亜臨界流体(水の場合は亜臨界水)と呼ばれる。300℃の亜臨界水では、常温常圧の水と比較し、2桁以上も高いイオン積を持つことから、電気化学反応を有意に促進することが出来る。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
担当:笘居 高明 准教授
電話:022-217-6322
E-mail:takaaki.tomai.e6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学多元物質科学研究所
担当:本間 格 教授
電話:022-217-5815
E-mail:itaru.honma.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 
広報情報室
電話:022-217-5866
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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