2020年 | プレスリリース?研究成果
公共交通機関を利用している人の方が歯科医院の通院をしやすく、受診の格差も少ない
【発表のポイント】
- 「歯科受診の所得による格差」が世界中で報告されている。日常的な公共交通機関利用が歯科受診の格差の減少と関連するかについては今まで検討されていなかった。
- 65歳以上の地域在住高齢者を対象とした調査の結果、歯科受診の所得による格差は、公共交通機関を日常的に利用している人の間で小さく、交互作用は男性でのみ有意に小さかった。公共交通機関を利用しやすい環境を整えることは、特に男性において格差を縮小させる可能性がある。
【概要】
う蝕や歯周病といった口腔疾患は世界一多い疾患として知られており、歯科医院に通院しやすいことは、口腔疾患に対応するために重要です。日本には国民皆保険制度が存在しますが、低所得者ほど歯科受診頻度が少ないという格差が存在します。公共交通機関の利用も歯科医院に通うために重要な要素ですが、日常的な公共交通機関利用と歯科受診格差を検討した研究は今までありませんでした。
本研究では65歳以上の地域在住高齢者約2万人を対象に、日常的な公共交通機関利用と歯科受診の所得による格差について検討しました。歯科医院の数など関連する変数を調整した上でも、日常的に公共交通機関を利用している人の方が非利用者と比べ、歯科治療を有意に多く受けていました。
また、日常的な公共交通機関利用者かどうかで、「歯科受診の所得による格差」が異なる可能性を考慮し、日常的な公共交通機関利用と所得の交互作用も検討しました。その結果、男性においてのみ交互作用は有意であり、公共交通機関を利用している人では、所得が低くても歯科受診を行っているという関係性がありました。以上から、公共交通機関を利用しやすい環境を整えることは、特に男性において、所得による歯科受診の格差を小さくする可能性があります。本研究成果は2019年11月15日に国際誌Community Dentistry and Oral Epidemiologyに電子版が掲載されました。
図1. 日常的な公共交通機関利用と等価所得の交互作用
補足:特に低所得者の男性において、日常的に公共交通機関を使用しているかどうかによって、歯科治療の受診頻度に有意な差がみられた。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野
准教授 相田 潤(あいだ じゅん)
電話:022-717-7639
E-mail:j-aida*umin.ac.jp(*を@に置き換えてください)
歯科医師 木内 桜(きうち さくら)
E-mail:sakura.kawamura.r2*dc.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
E-mail:den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)