2020年 | プレスリリース?研究成果
植物の根を茎に変えることに成功 再分化制御技術への糸口を発見
【発表のポイント】
- 茎の性質を持った器官を根で作り出すことに世界で初めて成功。
- 2つの転写因子1)を同時に活性化させることで、根を作り出す根端の分裂細胞から茎の性質を持つ細胞を作出。
- 食糧増産や化成品を代替する持続可能な材料の開発につながることが期待される。
【概要】
従来の研究では、茎を作り出す茎頂の分裂組織を構成?維持する遺伝子の研究は進んでいましたが、茎を作り出す仕組みそのものは不明でした。東北大学大学院生命科学研究科柴田大輔客員教授*、公益財団法人かずさDNA研究所花野滋特任研究員らは、東京大学の2つの研究グループの分析支援を受けて、茎を作り出している茎頂分裂組織2) で機能している2つの転写因子ATHB25とREM7を同時に活性化させると、根を作り出す根端の分裂細胞が茎の性質を持つ細胞を作り出すことを発見しました。
食糧増産、植物バイオマス利用のためのゲノム編集や遺伝子操作では、未分化細胞から茎を分化させられないことが障壁でしたが、それを解消する再分化制御技術の開発につながると期待されます。
本研究結果は、米国科学雑誌Cellの姉妹紙iScience誌(電子版)の2020年7月14日付けオンライン版で論文公開されました。
本研究は、(公財)かずさDNA研究所、科研費26711016, 17H06476, 17H05008、22880008, 23780040、さきがけ「細胞機能の構成的な理解と制御」、NEDO「植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発」からの研究資金を受けました。
*柴田はかずさDNA研究所と東北大学を兼務。
【図】2つの転写因子ATHB25とREM7を活性化させると、根と根の間に茎の性質を持った器官が発生し、その部分が重力に逆らって上方を向く。この器官は地上部の茎と同じく、葉緑体を有しており、光合成をする。小さな毛は根毛。
【用語解説】
1)転写因子:他の遺伝子を制御するタンパク質因子。それをコードする遺伝子が転写因子遺伝子。
2)茎頂分裂組織:植物の茎の上方の先端にあり、細胞分裂を繰り返すことにより、茎を伸長させたり、枝を作るなど、植物の地上部の器官形成のための幹細胞。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
(公財)かずさDNA研究所
担当 柴田 大輔(しばた だいすけ)
Eメール:daisuke.shibata.e4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)