2020年 | プレスリリース?研究成果
心不全の進展過程を解明 -ポンプ機能が保たれた心不全の病態に関する新知見-
【発表のポイント】
- ポンプ機能が保たれた心不全(HFpEF)が世界中で急増している。
- HFpEF患者の心臓では、筋肉が厚くなる心肥大と内腔が大きくなる心拡大の状態がしばしば見られるが、こうした状態が心不全の進展と共に変化するか否か、その変化が患者の生命予後や生活の質に影響するのかは不明であった。
- HFpEF患者における心肥大と心拡大の医学的な意義を世界で初めて明らかにした。
【概要】
近年、ポンプ機能が保たれた心不全(HFpEF)の増加が世界中で問題となっています。しかし、HFpEFの病態は未だ十分には解明されておらず、寿命と生活の質にどのように影響するのかは明らかではありませんでした。
東北大学大学院医学系研究科の下川宏明客員教授らの研究グループは、東北大学の第二次東北慢性心不全登録研究注1に登録されたHFpEF患者では、①心肥大と心拡大は時間経過とともに進行や退行を認めること、②心肥大と心拡大の存在が死亡と心不全入院の増加に関連すること、③心肥大と心拡大の進行や改善はそれぞれ心血管死亡注2と心不全入院の増加や減少と密接に関連すること、を明らかにしました。本研究成果は、HFpEF患者における心肥大と心拡大の医学的な意義を世界で初めて明らかにしたもので、今後、新たな治療方法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は2020年6月27日(英国時間、日本時間6月28日)に、欧州心臓病学会の学会誌であるEuropean Journal of Heart Failure誌にオンライン掲載されました。
図1.心不全の分類
従来、心不全はポンプ機能(=左室駆出率)が低下した状態と考えられてきたが、近年、ポンプ機能が低下していない、すなわちポンプ機能が保たれた心不全(HFpEF)注3の存在が注目されている。しかし、ポンプ機能が低下した心不全(HFrEF)注4と異なり、未だ有効な治療方法が確立しておらず、治療方法の開発が急務となっている。
【用語解説】
注1. CHART-2(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2)研究:東北大学循環器内科が実施中の心不全患者の予後に関する多施設前向き観察研究。2006年から2010年まで、のべ10,219人の患者登録を行い、現在も追跡調査を継続中の国内最大の慢性心不全の疫学研究である。
注2. 心血管死亡:心臓や血管に起こった疾患が原因で死亡すること。具体的には、心不全の悪化による死亡、不整脈による突然死、急性心筋梗塞による死亡、脳卒中(脳梗塞?脳出血)による死亡などのこと
注3. HFpEF: Heart Failure with preserved Ejection Fraction
注4. HFrEF: Heart Failure with reduced Ejection Fraction
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?循環器EBM開発学寄附講座
客員教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
(現職:国際医療福祉大学 副大学院長)
電話番号:022-717-7152
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)