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雑種由来の系統が爆発的な種多様化を繰り返す仕組みを理論的に解明

【発表のポイント】

  • 別種の生物どうしが交配する「雑種形成」は別種由来の遺伝子を組み合わせることで進化を加速させ、種の爆発的な多様化を促進しうる。
  • コンピューターを用いた進化シミュレーションにより、地形や環境の条件によって雑種形成による進化の促進効果が短期間しか持続しない場合と長期間持続して広地域へと伝播する場合があることを発見した。
  • 進化の促進効果が持続する条件が揃っている場合、一つの雑種由来系統が種の爆発的な多様化を離れた地域で何度も繰り返しうることが予測された。

【概要】

雑種形成は遺伝的多様性を増加させ、爆発的な種の多様化(適応放散)を促進しうると言われていますが、この効果が発揮されるのは雑種形成が起きた地点に限られ、その効力は短期間しか持続しないことが予想されます。ところが予想に反して、実際の生物では雑種由来の系統が離れた場所?異なる年代に何度も適応放散した実例が見出されています。東北大学大学院生命科学研究科の香川幸太郎博士(日本学術振興会特別研究員)とスイス水圏科学技術研究所のOle Seehausen教授は、この食い違いを理論的に解決しました。彼らの進化シミュレーションは、特定の地理的?環境的条件が揃えば雑種形成による適応放散の促進効果が長期間持続して広範囲へ伝播しうることを示し、そのメカニズムを解明しました(図1)。この結果は雑種形成という稀な現象が長期間?広範囲にまたがる大進化パターンに影響しうることを示唆します。

本研究成果は2020年9月9日にProceedings of the Royal Society B: Biological Sciences誌にオンライン掲載されました。

図1.雑種形成由来の遺伝的多様性が離れた地域に伝播されない場合とされる場合の例。(a)の地形条件では、二つの生息地(湖)が一つの経路(川)で接続されている。片方の湖で起きた雑種形成が高い遺伝的多様性を生み出すが、雑種集団がもう片方の湖に到達するまでの過程において、川の環境が生み出す自然選択によって遺伝的多様性が失われる。いっぽう(b)の地形条件では二つの湖が二つの川で接続されており、雑種集団は第二の湖へと分布拡大する過程で一時的に隔離された二系統に分岐する。それぞれの系統内では遺伝的多様性が失われるものの、各系統が異なる遺伝子セットを保持する可能性がある。これは、川の環境に適応できる遺伝子の組み合わせが一つでなく複数存在することに依る。そのような異なる遺伝子セットを持つ系統が第二の湖で交雑すると、過去に第一の湖で起きた雑種形成が生み出した遺伝的多様性が第二の湖で復活し、急速な進化が促進される。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 香川 幸太郎(かがわ こうたろう)
電話番号: 022-795-6689
Eメール: kotaro.kagawa.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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