2020年 | プレスリリース?研究成果
窒化ガリウム結晶の発光量子効率と光吸収の関係を解明
【発表のポイント】
- 窒化ガリウム自立結晶の発光量子効率*1と光吸収の関係を解明
- 半導体結晶の光吸収スペクトル計測の簡便な方法を開発
- 発光効率や点欠陥濃度の測定精度向上により、発光ダイオードやパワートランジスタなど、様々な半導体デバイスの省エネ化に寄与
【概要】
照明や通信、太陽光発電などの分野においては、電気エネルギーと光エネルギーとを相互に変換する発光ダイオード(LED)や半導体レーザ*2、太陽電池などの活用が不可欠です。これら半導体デバイスの性能は、ウェハの構成材料となる結晶の品質に強く左右されます。東北大学多元物質科学研究所 小島 一信 准教授、秩父 重英 教授は、全方位フォトルミネセンス(ODPL)計測法*3にて観測される発光スペクトル(ODPLスペクトル)に特有の双峰性形状が、結晶のもつ光吸収に起因していることを発見しました。
本研究は、高性能な電子デバイスや光デバイスの製造に適する省エネ材料である窒化ガリウム結晶の発光量子効率と光吸収の関係を明らかにするものであり、簡便な方法にて半導体結晶の光吸収スペクトル計測を可能にします。
本研究成果は、米国物理協会(AIP)の科学誌「Applied Physics Letters」誌にて、2020年10月28日(米国東部時間)にオンライン公開されました。
本研究の一部は、文科省の「人?環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック?アライアンス」およびキヤノン財団 研究助成プログラム「新産業を生む科学技術」、新学術領域研究「特異構造の結晶科学」の助成を受けています。
【参考画像】 (a) 温度可変全方位フォトルミネセンス(ODPL)計測装置の概略図。(b) 室温および (c) 極低温下において計測されたODPLスペクトルおよび標準PL(SPL)スペクトル。発光強度比ρはODPLスペクトルをSPLスペクトルにて除したもの。光吸収が強いエネルギー領域ではρが1に収束(規格化したODPLスペクトルとSPLスペクトルとが一致)している。
【用語解説】
*1.発光量子効率
対象となる発光材料に(本研究では励起レーザによって)入射?吸収された光子数に対する、発光に利用された光子数の割合のこと。
*2. 半導体レーザ
光通信やCD?DVDなどの光メディアの情報読み込み?書き込みなどに利用される、指向性の高いレーザ光を放出する半導体光デバイスのこと。
*3. 全方位フォトルミネセンス(ODPL)法
積分球を使った分光法の一つ。基礎吸収端エネルギー以上の光の放出方向が決まっていることを利用し、結晶の発光効率を再現性良く測定できる。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 小島 一信(こじま かずのぶ)
教 授 秩父 重英(ちちぶ しげふさ)
電話: 022-217-5363
E-mail: kkojima*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話: 022-217-5198
E-mail: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)