2020年 | プレスリリース?研究成果
リンパ球の一種B細胞による抗体産生に重要な因子を発見 - PC4タンパク質を介したクロマチン制御によるB細胞分化制御機構の解明 -
【研究のポイント】
- B細胞注1が抗体注2を産生する細胞に分化するにあたり、クロマチン注3制御タンパク質PC4が重要であることを明らかにした。
- B細胞においてPC4が働くためには、転写因子注4IKAROSとIRF4との協調的な働きが不可欠であることを発見した。
- PC4は、B細胞が関与する免疫不全において抗体の産生を促進するための標的になり得る。
【研究概要】
白血球の一つであるB細胞は抗体を産生する細胞に分化して病原体などを排除する役割を持っています。東北大学大学院医学系研究科生物化学分野の落合恭子(おちあい きょうこ)助教、五十嵐和彦(いがらし かずひこ)教授らのグループは、B細胞における抗体産生において、クロマチン構造を制御するタンパク質であるPC4が重要であることを明らかにしました。
本研究により、PC4がB細胞で転写因子IKAROSとともに、抗体獲得に必要なクロマチン状態を制御していることを明らかにしました。さらに、PC4とIKAROSは、転写因子IRF4とともに抗体産生細胞の分化と抗体獲得を促すことが分かりました。本研究は、抗体産生細胞分化に重要なB細胞のクロマチン制御を初めて明らかにした重要な報告で、本研究によって、B細胞が関与する免疫不全において抗体獲得改善法の発展に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2020年12月22日午前11時(現地時間、日本時間12月23日午前1時)にCell Reports誌(電子版)に掲載されました。
図1.B細胞の抗体産生細胞への分化
B細胞のクロマチンはPC4とIKAROSによって制御されており(左)、これらがIRF4とともに抗体産生細胞の分化と抗体獲得を促進する(右)。
【用語解説】
注1. B細胞:ウイルスなどの病原体を認識し、抗体を産生する細胞へ分化する。
注2. 抗体:病原体を認識し、抗体産生細胞に分化したB細胞が産生するタンパク質。病原体に結合して中和するなどして無毒化したり、他の白血球による病原体の消化(食細胞による貪食)を助けるなどのはたらきがある。
注3. クロマチン:遺伝子情報はDNA上にコードされていて、DNAの総長は2メートル程にもなる。クロマチンは、DNAを細胞核内に収納するための構造で、ヒストンと呼ばれるタンパク質とヒストンに巻き付いたDNAから成る。
注4. 転写因子:遺伝子発現を制御するスイッチとなるタンパク質。B細胞が抗体産生細胞へ分化するためには、転写因子IKAROSやIRF4の機能が重要。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科生物化学分野
助教 落合 恭子
電話番号:022-717-7597
Eメール:kochiai*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
教授 五十嵐 和彦
電話番号:022-717-7598
Eメール:igarashi*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)