本文へ
ここから本文です

リチウムやナトリウム金属の針状析出発生抑制に成功 アルカリ金属負極蓄電池の実現へ向けた大きな一歩

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 教授 市坪哲
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • アルカリ土類金属※1塩などの多価イオンを電解液に添加することにより、リチウムやナトリウム金属は、比較的平坦な析出形態になることを発見しました。
  • 多価イオンの導入により、一価のリチウムイオンやナトリウムイオンはアニオン(陰イオン)とより強く結合する傾向があることを示しました。
  • リチウムやナトリウムを用いたアルカリ金属※2負極電池の性能と安全性を向上させる新しい電解液設計の重要な指針を与えるものです。

【概要】

蓄電池の負極電極材料候補の中で、「金属負極」はもっとも高い電荷容量密度を有しており、エネルギー密度向上の観点からその実用化が期待されてきました。しかし、金属単体の析出?溶解反応の制御は難しく、安定な充放電特性を維持することが困難です。特に、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属元素は、電極付近の濃度?電場分布の変動により、針状の様な樹枝状結晶(デンドライト)が形成され、電極から剥がれやすく、電池内部で短絡を引き起こし、サイクル寿命を低下させてしまいます。この問題は、リチウムイオン電池の誕生以来、根本的に解決するべき喫緊の課題として残り続けています。

東北大学金属材料研究所の李弘毅 特任助教、村山将来 大学院生(当時、大学院工学研究科)および市坪哲 教授は、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩をリチウムイオンやナトリウムイオンを含有する電解液に添加することにより、一価カチオン(陽イオン)の溶媒和構造が改変され、リチウムやナトリウム金属析出の活性化過程が制御されて、平坦な析出形態を維持できることを発見しました。これは、金属負極電池に向けた新たな電解液設計指針を与えるものです。多くの超えるべき課題を解決する端緒となり、実用化への大きな一歩になることが期待されます。

本成果は2022年5月20日11時(米国東部時間)に、Cell Pressが刊行するCell Reports Physical Science誌に公開されました。

図1 多価カチオン添加による電解液構造の改変とアルカリ金属の析出形態へ与える影響

【用語解説】

※1 アルカリ土類金属
周期表第2族のうちカルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの4元素の総称。これにベリリウム、マグネシウムを加えた6元素を指すこともある。イオン化傾向が大きく、電子2個を失って二価カチオンになる。

※2 アルカリ金属.
周期表第1族元素のうち水素を除くリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムの6元素の総称。元素中で最もイオン化傾向が大きく、電子1個を失って一価カチオンになる。イオン化により、大きいエネルギーの利得を得られるため、電池材料として注目されている。アルカリ金属元素を利用した蓄電池として、リチウムイオン電池やナトリウム硫黄(NAS)電池が挙げられる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所
先端エネルギー材料理工共創研究センター
特任助教 李 弘毅
TEL:022-215-2390
E-mail:li.hongyi*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

◆報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
E-mail:press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs07

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ