2024年 | プレスリリース?研究成果
機械学習で迅速に有効な新規抗菌薬候補分子を見つける新技術を開発 ─これまで報告された膨大な候補分子情報を記述子に変換利用─
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 笠井均
研究室ウェブサイト
多元物質科学研究所 助教 中辻博貴
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 過去のデータ利用を簡易にし、迅速に有効な新規抗菌薬候補の発見を可能とする置換基(注1)に着目した記述子(Combined substitute number: CSN)(注2)を提案しました。
- CSNを用いて過去に報告された分子約1万の構造と抗菌活性データを学習し、未知の薬剤候補分子約3200万を生成?活性予測を行いました。その結果、予測値の傾向は実験結果によく一致し、本手法の有効性が示されました。
- 本手法は、有効な新規抗菌薬候補分子を迅速に見つけ出すことができ、また過去の蓄積データの利用が容易なため、抗菌薬のみならず様々な分野への貢献も期待できます。
【概要】
新しい抗菌薬の開発は、薬剤耐性菌(注3)(AMR)に対抗するため常に必要とされています。しかし開発コストの上昇などといった昨今の開発環境の悪化による開発ペースの低下が問題になっています。
東北大学多元物質科学研究所の笠井均教授と中辻博貴助教(研究当時 株式会社コンポン研究所)らによる共同研究グループは、このたび分子の置換基情報のみを用いた記述子(Combined substitute number: CSN)による情報処理技術の利用を提案しました。過去の抗菌薬候補分子の情報を本記述子に変換して機械学習を行うことにより、情報収集コストと計算コストを大きく低減した上で有意な抗菌活性の予測モデルを構築することに成功しました。また本記述子を用いることで、可能性の高い約3200万個の候補分子も容易に提案することができました。実際に予測の傾向と実験結果はよく一致しており、本手法の有効性が明らかになっています。
本研究成果は、2024年2月19日(現地時間)付けで、学術誌 Scientific Reports(電子版)に掲載されました。
図1. 化合物表記法?分子記述子の課題と本研究の取り組み
【用語解説】
注1.置換基
有機化合物において、基本骨格の持つ水素から置換された原子または原子の集団のことを指す。
注2.記述子(Combined substitute number: CSN)
分子記述子とも言う。分子の特徴を化学構造や物理化学的性質に基づく数値ベクトルとして表現したもの。
注3.薬剤耐性菌
抗菌薬への耐性を獲得した細菌
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院多元物質科学研究所
教授 笠井 均(かさい ひとし)
電話番号:022-217-5612
Email:kasai*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
Email:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています