2024年 | プレスリリース?研究成果
市民の力でハチを保全し、植物を保全する ―市民参加型調査のデータを使用したハチの分布と送粉の機能形質の分布推定―
【本学研究者情報】
〇教養教育院 総長特命教授 河田雅圭
研究室ウェブサイト
【概要】
国立環境研究所、東北大学、山形大学、東京農工大学、森林総合研究所※1の研究グループは、日本の代表的な社会性※2のハチであるマルハナバチ類とニホンミツバチの種数と希少種の分布、送粉の機能形質の分布を推定しました。機能形質としては口吻(こうふん)(舌)の長さ(口吻長)の範囲※3を用いました。
その結果、ハチの種数は北海道の西部で多い一方で、口吻長の範囲は本州の中部で広いことが推定されました。希少種の分布する地域は、その多くが口吻長の範囲が広い地域と一致していました。この結果は、ハチの保全計画において、種数だけでなく機能形質の分布も考慮することの重要性を示しています。
本研究は、14種のハチ(マルハナバチ類とニホンミツバチ)の全国的な分布を推定した重要な研究であり、さらにハチに花粉を運んでもらう植物への影響も考慮して、送粉の機能形質の分布も推定した初めての研究です。
なお、分布の推定には、東北大学と山形大学が行っている市民参加型調査「花まるマルハナバチ国勢調査」で得られたデータを使用しており、市民の力を借りることによって全国的な保全対策の計画が立てられることを示した研究でもあります。
本研究の成果は、2024年6月25日付で刊行される『Scientific Reports』に掲載されました。
図1 花を訪れるハチとその口吻。ハチは、口吻の中にある舌を高速で前後に動かして蜜を集める。口吻が長いほど細長い花から蜜を集めることができる。(a)分析対象としたハチ14種の中でも長い口吻を持つ、ナガマルハナバチ。この写真では、細長い筒状の花をもつノアザミに訪れている。(b) 短い口吻を持つ、二ホンミツバチ。この写真では浅い皿状のヤブカラシの花を訪れている。
【用語解説】
※1中静透教授は研究開始時には東北大学に所属し、現在は森林総合研究所に所属する。
※2集団をつくり、その中に女王バチと働きバチのような階級を生じて分業が行われているような昆虫を社会性昆虫と呼ぶ。
※3 口吻長の範囲は、その場所に生息すると推定された種の口吻長の最大値と最小値の差を算出し、該当する口吻長を持つ種が生息していない口吻長を引いたもの。例えば、口吻長が5-7mmの種と、9-12mmの種、2種のみが生息すると推定された場所では、7-9mmの口吻長をもつ種は存在しないため、口吻長の範囲は、(12-5)-(9-7)=5mmとなる。マルハナバチ類の口吻長の範囲の推定には、山形大学の横山教授と東京農工大学の井上教授が調査した口吻長のデータを使用した。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学高度教養教育?学生支援機構 教養教育院
総長特命教授 河田雅圭
TEL: 022-795-4974
Email: kawata*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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