2024年 | プレスリリース?研究成果
中性子、陽子それぞれ3個ずつは原子核として不安定と実験で証明 ─ 自然界の強い力を理解する重要なヒントが得られる ─
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科 物理学専攻
准教授 三木謙二郎(みきけんじろう)
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 三個の中性子のみ、三個の陽子のみから成る量子系の生成に成功しました。
- 三中性子系が二中性子系?四中性子系と比較して不安定であることを明らかにしました。
- 三中性子系と三陽子系の構造には類似性があることも明らかにしました。
- 中性子星などの同種の核子が凝集した系についてミクロな立場から理解を進める成果となりました。
【概要】
自然界には、重力、電磁力、弱い力、強い力という4種類の力(注1)が存在しますが、強い力が支配する原子核の世界は分かっていないことだらけです。近年、原子核を構成する核子である中性子だけ、また陽子だけを凝集した系を人工的に生成し、安定かどうかを調べる研究が進められています。先行研究で、二中性子系と四中性子系の準安定性を示唆する実験結果が得られています。しかし強い力の理解を進めるために必要な核子数3の系の安定性は未解決となっていました。
東北大学大学院理学研究科の三木謙二郎准教授らによる共同研究グループは、三個の中性子のみ、三個の陽子のみから成る量子系を生成しその不安定性を明らかにしました。この成果は、宇宙に多数存在している中性子星をミクロな立場から明らかにするためにも重要であり、星の進化や元素を合成する過程の解明にもつながります。実験は、本研究グループが富山大学水素同位体科学研究センターで開発した世界最高厚のトリチウム吸蔵チタン標的と、理化学研究所仁科加速器科学研究センターRIビームファクトリー、大阪大学核物理研究センターという2つの加速器施設を駆使して展開されました。
研究成果は、米国物理学会誌Physical Review Lettersに、2024年7月4日(日本時間)にオンライン公開されました。
図1. 本研究で観測した原子核反応の概念図。3Hがトリチウム原子核、3Heがヘリウム3原子核を示す。左図、右図の測定をそれぞれ理化学研究所仁科加速器科学研究センターRIビームファクトリー、大阪大学核物理研究センターで実現した。
【用語解説】
注1. 力の根源を極微の素粒子の世界まで辿ってゆくと、重力、電磁力、弱い力、強い力の4種類に分類できることが知られています。重力、電磁力は日常的に身の回りで感じられる一方で、強い力、弱い力は原子核のスケール以下のミクロな距離でのみ作用します。強い力は文字通りこれら4種類の力の中で最も強く、この力が中性子、陽子を束ねることで原子核は存在しています。太陽やその他の星の輝きの大部分は、この強い力のエネルギーが解放されたものが光となって我々のところにまで届いているものです。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科物理学専攻
准教授 三木 謙二郎(みき けんじろう)
TEL:022-795-6450
Email: kmiki*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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