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吾妻鏡に記された超新星が遺した奇妙な天体 ――歴史的記録と最新科学の融合が解明する、SN 1181の研究成果――

【本学研究者情報】

〇東北大学大学院理学研究科
准教授 樫山和己(かしやまかずみ)
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 1181年に出現した超新星爆発とそれの遺した活発な白色矮星の性質を明らかにした。

  • X線で多層に光る超新星残骸を初めて明らかにした。

  • およそ1000年前に生じた超新星爆発の残骸が現代に再び活発化するという類を見ない現象の解明に寄与し、超新星爆発の多様性理解に貢献することが期待される。

【概要】

東京大学大学院理学系研究科の黄天鋭大学院生らの研究グループは、他では見られない性質を持つ超新星残骸の性質を明らかにした。吾妻鏡などの古い歴史書や日記にはしばしば「客星」が記されている。これらは彗星や超新星爆発(注1)のように突如空に現れ、明るく輝き、やがて消える星のことである。客星の多くは現代の天文観測によって同定済みだが、平安時代から鎌倉時代への過渡期、1181年に出現した客星(SN 1181)の正体は長年未解明であった。2019年、SN 1181が出現したカシオペヤ座付近の方角に赤外線やX線で明るく輝く星雲とその中心にある白色矮星(注2)WD J005311が発見され、一躍SN 1181の残骸天体の有力な候補となった。本研究グループは、この天体について最新のX線観測データを解析し、その性質を説明する理論モデルを構築した。その結果、これはおよそ1000年前に2つの白色矮星が合体して生じた比較的暗い超新星爆発の残骸であり、歴史書に記されているSN 1181の性質と一致することを確かめた。加えて、WD J005311は爆発からおよそ1000年の時を経てここ数十年の間に再び活性化し高速の星風を吹かせ始めた、という類を見ない性質を持つことを発見した。通常の白色矮星を起源とした超新星爆発は宇宙の標準光源としても知られているが、本研究で明らかにした本天体はそのような超新星爆発より暗く、普遍的とされていた性質を持たないため、これらの違いを調べることによって、未解明である超新星爆発の発生メカニズムについての理解が深まると考えられる。

1181年に生じた超新星爆発残骸の多波長観測結果 (クレジット:G. Ferrand and J.English, NASA/Chandra/WISE, ESA/XMM ,MDM/R.Fessen, Pan-STARRS)

【用語解説】

(注1)超新星爆発
夜空に突如として現れ、明るく輝く星は新星と呼ばれるが、その中でも特に明るいもの。白色矮星と他の星が互いの周りを回っている連星系で生じるIa型と大質量の星が寿命の終わりに引き起こすII型に分類される。

(注2)白色矮星
太陽質量の8倍以下の質量をもつ恒星の進化の最終状態。核融合反応が止まり、自力で光ることのできなくなった星であり、銀河系にある恒星の97%以上がこのような進化をたどると考えられている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科
准教授 樫山 和己(かしやま かずみ)
Email:kazumi.kashiyama.a4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
電話:022?795?6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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