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沈み込む炭素がプレートをマントルとの境界で滑りやすくすることを発見 ~炭素循環と地震活動との関連性を示唆~

【本学研究者情報】

〇大学院環境科学研究科 教授 岡本敦
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 最先端の熱力学計算により、プレートと共に沈み込む堆積物から二酸化炭素を含む流体が発生し、上盤マントルと反応することを発見。
  • 西南日本のような暖かい沈み込み帯において、プレート境界のマントルは炭素を固定しやすく、同時に力学的に弱い滑石層を生成する。
  • 表層から地球内部へ持ち込まれる炭素の循環が、沈み込みプレート境界の地震活動域の下限を決めている可能性がある。

【概要】

プレートテクトニクス(注1)によって莫大な量の炭素が有機物や炭酸塩の形で地球内部に持ち込まれています。しかし、これらの炭素が地球内部に持ち込まれた時にプレート境界で起こる化学反応や力学的性質に与える影響、さらに地震との関係は、未だによくわかっていません。

国士舘大学の大柳良介講師(国立研究開発法人海洋研究開発機構外来研究員)と東北大学大学院環境科学研究科の岡本敦教授は、流体?鉱物反応に関する最先端の熱力学計算を用いて、東北日本と西南日本の沈み込み帯を対象に、沈み込む堆積物から発生する流体の化学組成と、マントルとの反応を調べました。その結果、冷たい沈み込み帯である東北日本では堆積物から炭素を含む流体はほとんど発生しないのに対して、暖かい沈み込み帯の西南日本では炭素が溶け込んだ流体が大量に放出され、プレート境界の上盤マントルと反応し、炭酸塩鉱物と滑石からなる層が形成されることを見出しました(図1)。炭酸塩鉱物と滑石の層は深さ40 kmから急激に増え始め、深くなるほど厚くなっていきます。

滑石は、摩擦係数が非常に小さく、安定すべりを起こす鉱物として知られています。本研究で、厚い滑石層の形成し始める深度が西南日本で観測される地震の下限域と一致していることが示され、炭素の大循環がスロー地震を含めた沈み込み境界の地震活動領域に大きな影響を与えることを示唆しています(図1)。今後、地球深部炭素循環という化学プロセスと地震発生の物理プロセスをつなぐ新たな研究が期待されます。本成果は2024年8月26日、英国Springer Nature社が発行する科学誌Nature Communicationsに掲載されました。

図1. 本研究で提案された西南日本沈み込み帯における炭素を含む流体の発生とマントルにおける反応プロセス。生物(プランクトンなど)などに由来する炭素は海底に堆積し(図左上)、プレートの沈み込みに伴って地球内部へ運び込まれる。沈み込んだ堆積物中に含まれる炭素の一部は流体に溶け込み、水とともに上盤のマントルへ供給される。このような流体とマントルが反応することで、プレート境界のマントルに炭酸塩鉱物と力学的に弱い滑石が生成する。この炭酸塩と滑石の層は、浅部マントル(約35 km)より深部マントル(約40 -70 km)で厚くなり、スロー地震を含めた地震活動領域の下限を決めている可能性がある。

【用語解説】

注1.プレートテクトニクス:地球の表層部はいくつかの硬い岩板(プレート)に分かれている。プレートテクトニクスは、プレートがほとんど変形しないまま地球内部の高温の岩石であるマントルの対流運動によって相互に水平運動(球面上では回転運動)していると考える理論モデル。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
教授 岡本 敦
TEL: 022-795-6334
Email: atsushi.okamoto.d4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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