2024年 | プレスリリース?研究成果
血管収縮因子エンドセリンと受容体タンパク質が形成する複合体構造を解明
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所(生命科学研究科 兼務)教授 米倉功治
研究室ウェブサイト 生命科学研究科研究者情報
【発表のポイント】
- クライオ電子顕微鏡を用いて、血管収縮作用を持つペプチドホルモンであるエンドセリンについて、その受容体およびGタンパク質(細胞膜上で情報伝達を担うタンパク質)との複合体構造を調べ、細胞間での情報伝達メカニズムを明らかにしました。
【概要】
ヒトは約60兆個の細胞で構成されており、細胞間での情報交換が協調的に行われることで、正常な生命活動を維持しています。各細胞は細胞膜に包まれ、細胞外からのさまざまなシグナルは、細胞膜の受容体タンパク質によって細胞内に伝えられます。血管収縮作用を持つペプチドホルモンであるエンドセリン(ET)については、細胞膜に存在するエンドセリンB型受容体(ETBR)との結合構造が解明されていますが、ETBRとGタンパク質(細胞膜上で情報伝達を担うタンパク質)の天然結合状態の複合体構造は未解明であり、情報伝達メカニズムも十分に理解されていません。
本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いて、ET、ETBR、Gタンパク質の複合体構造を観察しました。その結果、Gタンパク質とETBRが強く結合する構造が明らかになりました。また、Gタンパク質の種類を識別するメカニズムや、受容体の活性化に関わる要因を解明しました。
本研究成果は、ETによる細胞情報伝達メカニズムの理解を深めるだけでなく、立体構造に基づいた新しい薬剤設計に役立つと期待されます。
図1 エンドセリン受容体の活性化スキーム。細胞外からエンドセリン(ET-1)が細胞膜上の受容体(ETB)に結合すると、細胞内の三量体Gタンパク質のGDPがGTPに交換され、Gタンパク質が活性化される。その結果、細胞内のカルシウムイオン濃度上昇などの、細胞応答が誘導される。
【論文情報】
タイトル:Structure of endothelin ETB receptor-Gi complex in a conformation stabilized by unique NPxxL motif.(エンドセリンB型受容体とヘテロ三量体Gタンパク質の複合体構造と生化学的特性)
著者:Kazutoshi Tani, Saori Maki-Yonekura, Ryo Kanno, Tatsuki Negami, Tasuku Hamaguchi, Malgorzata Hall, Akira Mizoguchi, Bruno M. Humbel, Tohru Terada, Koji Yonekura & Tomoko Doi
掲載誌:Communications Biology
DOI:10.1038/s42003-024-06905-z
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
教授 米倉 功治(よねくら こうじ)
電話: 022-217-5380
Email:koji.yonekura.a5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
電話: 022-217-5198
Email:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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