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微生物を利用したセレン酸除去材料の作製 ―環境にやさしいプロセスでの環境浄化材料の創製―

【本学研究者情報】

〇大学院環境科学研究科 教授 上高原理暢
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 課題とされている排水からのセレン除去に有効なジャロサイト1の作製に、鉄酸化細菌2Acidithiobacillus ferrooxidans)を利用して成功しました。
  • 鉄酸化細菌により合成されたジャロサイトは、これまでにセレン酸除去の報告のあるシュベルトマナイト3と同等のセレン除去能力を示し、さらにシュベルトマナイトよりも除去したセレン酸を安定に保持できる可能性を示しました。
  • 微生物を利用して合成したジャロサイトは、廃水からの安定的かつ効率的なセレン除去材料になり得ることを示しました。

【概要】

セレンは多くの生物にとって必須な微量元素である一方で、高濃度で強い毒性を示すため廃水から除去する必要があります。ただし、水溶性のセレンの化学形態の一つであるセレン酸(Se(VI))は除去が困難で、廃水からのセレン酸の安価で容易な除去方法の開発が求められています。

東北大学大学院環境科学研究科の上髙原 理暢教授、ウパサナ ジャリヤ大学院生、簡 梅芳准教授、梅津 将喜助教は、水中のセレン酸の除去のために、微生物を利用して合成したジャロサイトを除去材料として検討しました。培養培地のpHを制御することで、これまでに高いセレン酸の除去を示すことが報告されているシュベルトマナイトと同等なセレン除去能力を示すジャロサイトの作製に成功しました。ジャロサイトはシュベルトマナイトよりも安定な結晶であり、除去後も安定にセレン酸を保持できる除去材料として期待できます。

本研究成果は、2024年10月29日に、有害物質が環境に及ぼす影響に関する専門誌Journal of Hazardous Materialsに掲載されました。

図1. 初期pHを1.5~4.0に制御した培地中で微生物を利用して作製したジャロサイト(J-1.5~J-4.0)、化学合成したジャロサイト(J-90C)および微生物を利用して作製したシュベルトマナイト(S-2.5)の走査型電子顕微鏡写真。

【用語解説】

注1. ジャロサイト:代表的な組成としてKFe3(SO4)2(OH)6を有する鉱物。

注2. 鉄酸化細菌:Fe2+をFe3+に酸化することでエネルギーを得る独立栄養細菌。

注3. シュベルトマナイト:代表的な組成としてFe8O8(OH)8-2x(SO4)xを有する鉱物。

【論文情報】

タイトル:Effective selenate removal using pH modulated synthesis of biogenic jarosite: comparative insight with non-biogenic jarosite and biogenic schwertmannite
著者: Upasana Jhariya, Mei-Fang Chien, Masaki Umetsu, Masanobu Kamitakahara*
*責任著者:東北大学大学院環境科学研究科 教授 上髙原 理暢
掲載誌:Journal of Hazardous Materials
DOI:10.1016/j.jhazmat.2024.136256

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
教授 上髙原 理暢
TEL : 022-795-7375
Email : masanobu.kamitakahara.a6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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