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植物由来?生分解性物質を利用したCO?削減技術を発明 ―CO?地中貯留?鉱物固定をよりいっそう安全?安心?効率的に―

【本学研究者情報】

〇大学院環境科学研究科 助教 王佳婕
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 鉱物の溶解を促進し、金属イオンを捕捉する植物由来?生分解性キレート剤(注1を利用した二酸化炭素(CO2)地中貯留?鉱物固定(注2の促進法を発明しました。
  • 地下の岩石層の鉱物を溶解して孔隙を形成し、孔隙の量と連結性(CO2貯留空間)を増大させるとともに浸透性(CO2の圧入性)を改善できます。
  • キレート剤を含む海水にCO2を溶け込ませて貯留すれば、孔隙を形成しながら、CO2と同時に炭酸塩鉱物の形成に必要な金属イオンも貯留できます。

【概要】

地球温暖化の原因物質である大気中CO2の削減に向けて、近年、CO2と反応して炭酸塩鉱物を形成するカルシウム等の金属元素に富む玄武岩などの岩石層を用いたCO2地中貯留が世界的に注目されています。しかし、CO2地中貯留の地下環境は通常、低温で反応性に乏しいうえ、地下の孔隙の量や連結性あるいは浸透性も十分に大きいとは限りません。これらの課題を解決する技術が必要です。またCO2を水に溶かしこんで貯留する方式では、海水の使用が望まれますが、海水中の金属イオンとCO2の反応をCO2の貯留が完了するまで一時的に抑制する技術も必要です。

東北大学大学院環境科学研究科の王佳婕(オウ?カショウ)助教、堰合涼太大学院生(研究当時)、田村諒太大学院生、渡邉則昭教授は、鉱物の溶解を促進し、金属イオンを捕捉する植物由来?生分解性キレート剤を利用してこれらの課題を解決する技術を考案し、室内実験によりその実現可能性を実証しました(PCT/JP2023/033026)。本技術は、安全?安心?効率的なCO2地中貯留?鉱物固定の実現を通じて、世界の低炭素化へ貢献することが期待されます。

本研究成果は2024 年11月15日付でScience Advancesに掲載されました。

図1. 植物由来?生分解性キレート剤を利用したCO2地中貯留?鉱物固定促進法。

【用語解説】

注1 キレート剤:金属錯体の形成に用いる配位子の一種。配位子は、配位原子と呼ばれる酸素や窒素のような非共有電子対を持った原子を含み、この配位原子が金属イオンと直接結合する。配位原子を一つだけ持つ配位子を単座配位子、複数個持つものを多座配位子と言い、後者がキレート剤。金属イオンとの結合の安定性は、単座配位子よりも多座配位子であるキレート剤の方が安定。

注2 二酸化炭素(CO2)地中貯留?鉱物固定:発電所や化学工場などから排出されたCO2を分離して集め、地中深くの岩石層中の孔隙に圧入?貯留し、さらに、岩石中の鉱物と水ならびにCO2が関与して炭酸塩鉱物が形成される化学反応を利用してCO2を鉱物として固定すること。

【論文情報】

タイトル:CO2 capture, geological storage, and mineralization using biobased biodegradable chelating agents and seawater
著者: Jiajie Wang*、 Ryota Sekiai、 Ryota Tamura、 Noriaki Watanabe*
*責任著者:東北大学 大学院 環境科学研究科 助教 王佳婕
      東北大学 大学院 環境科学研究科 教授 渡邉則昭
掲載誌:Science Advances
DOI:10.1126/sciadv.adq0515

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 大学院 環境科学研究科
教授 渡邉 則昭
TEL: 022-795-7384
Email: noriaki.watanabe.e6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

助教 王 佳婕
TEL: 022-795-4859
Email: wang.jiajie.e4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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