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保育施設の早期利用は子どもの発達を促進する 3歳児神話に科学的な根拠はない

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科発達環境医学分野 教授 大田千晴
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • かねてより日本には、子どもは3歳までは家庭において母親の手で育てないとその後の成長に悪影響を及ぼすという「3歳児神話」という考えがありました。この考えに合理的な根拠がないことは厚生労働省が言及していますが、いまでも完全に払拭されているとは言えません。
  • エコチル調査に参加した約4万人のデータを解析し、保育施設利用と子どもの発達について調べた結果、1歳未満から保育施設を利用していた子どもは、3歳まで保育施設を利用しなかった子どもに比べて3歳時点で発達が良いことが明らかになりました。
  • 本研究により早期の保育施設利用に対するポジティブな効果が示されたことで、科学的な根拠に欠けるネガティブな印象が払拭されることが期待されます。*保育施設と家庭での子育ての双方にそれぞれメリットがあるのは言うまでもなく、今回の結果が、保育施設を利用しない家庭での子育てを否定するものではありません。

【概要】

早期の保育施設利用に対しては、否定的な意見が出されることが少なくありませんでした。

東北大学大学院医学系研究科発達環境医学分野の大学院生金森啓太医師、大田千晴教授らの研究チームは、「子どもの健康と環境に関する全国調査(「エコチル調査」)」の参加者のうち、約4万人のデータから、保育施設利用と子どもの発達について解析しました。その結果、1歳未満から保育施設を利用していた子どもは、3歳まで保育施設を利用しなかった子どもに比べて、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決能力、個人社会スキルの5つの領域で3歳時点での発達が良いことがわかりました。今回の結果により、早期の保育施設利用に対するポジティブな効果が科学的根拠をもって示され、これまでのネガティブな印象が払拭されることが期待されます。

本研究の成果は、2024年11月28日付で科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

図1. 保育施設利用の有無と3歳時点の発達との関連
ASQ-3スコアの合計点が高いほど発達が優れることを示しています。ASQ-3スコアの合計点の推移を比較したところ、すべての領域で保育施設利用群の方が3歳時点でのASQ-3スコアが高くなっており、特にその差がコミュニケーションと個人社会スキルで目立ちます。

【用語解説】

注1.雷速体育_中国足彩网¥在线直播s and Stages Questionnaires? (ASQ)-3:1~66か月(5歳半)の小児の発達遅滞をスクリーニングするために設計されたツールであり、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決能力、個人社会スキルの5つの領域に分かれた30項目の質問から構成されています。たとえば「上手に走り,何かにぶつかったり転んだりせずに止まりますか。」などの質問に対して、保護者が回答し、回答に応じた点数が付けられ、それぞれの領域での合計点が算出されます。ASQ-3にはカットオフ値が設定されており、カットオフ値を下回る場合に発達の遅れの可能性が示唆されます。

【論文情報】

タイトル:Group childcare has a positive impact on child development from the Japan Environment and Children's Study
著者:Keita Kanamori1, 2, Tomohisa Suzuki1, 4, Chiharu Ota1, 3, 4, and the Japan Environment and Children's Study Group5
1東北大学大学院医学系研究科:発達環境医学分野
2岩手県立磐井病院:小児科
3東北大学病院:小児科
4東北大学大学院医学系研究科:環境遺伝医学総合センター
5グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者),コアセンター長,メディカルサポートセンター代表,各ユニットセンターから構成
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-024-81343-9

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科発達環境医学分野 
エコチル調査宮城ユニットセンター
教授 大田千晴
TEL: 022-717-8949
Email: chiharu.ota.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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