2024年 | プレスリリース?研究成果
CO?還元触媒の性能は幾何構造と安定性で異なることが判明 ─ CO?を二次利用して減らす高性能触媒開発の指針として脱炭素社会の実現に貢献 ─
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 電気化学的二酸化炭素還元(注1)触媒として機能する金属微粒子(金属ナノクラスター(NC)(注2))の精密合成に成功しました。
- 本手法により得られた二つの金属ナノクラスターの耐久性と生成物の選択率の差は金属ナノクラスター内の相互作用に由来することを解明しました。
- こうした相互作用制御により、高活性触媒の開発が促進されるとともに、脱炭素社会の実現がまた一歩近づくことが期待されます。
【概要】
地球温暖化の原因物質とされる二酸化炭素(CO2)を大気中から減らすことは、世界で最も重要な課題の一つです。CO2を地下深くに固定する方法なども進められていますが、有用な有機物質に変換して再利用する方法も注目されています。
東北大学多元物質科学研究所の根岸雄一 教授、東京理科大学理学部第一部の川脇徳久 講師、Sourav Biswas助教、吉越裕介 助教、同大学院理学研究科修士課程の新行内大和 大学院生、尾上雅季 大学院生、オーストラリア?アデレート(Adelaide)大学のGregory F. Metha教授らの研究グループは、身近な金属である銅(Cu)を触媒として用いる電気化学的二酸化炭素還元における生成物の選択率や触媒の耐久性を高める画期的な方法を発表しました。具体的には、銅ナノクラスター(Cu NC)内の配位子相互作用を原子レベルで設計することで、比較的高いギ酸(HCOOH)生成選択率と耐久性を兼ね備えた電気化学的二酸化炭素還元触媒の開発に成功しました。
この成果は二酸化炭素還元触媒の開発に新たな指針を示し、社会が脱炭素社会実現にさらに一歩近づくことに貢献すると期待されます。
本研究成果は、2024年12月4日付けで、ナノサイエンスとナノテクノロジーの専門誌Smallに掲載されました。
図1. Cu14-CHTとCu14-PETの幾何構造、配位子、相互作用及び安定性の模式図
【用語解説】
注1.電気化学的二酸化炭素還元:電気分解反応によって二酸化炭素(CO2)を分解し、還元的に有用な物質へと変換する反応。
注2.金属ナノクラスター(NC):数個から数百個の金属原子で構成される微粒子。
【論文情報】
タイトル:Ligand-Dependent Intracluster Interactions in Electrochemical CO2 Reduction Using Cu14 Nanoclusters
著者: 新行内大和1、尾上雅季1、Sourav Biswas 3、田中智也1、神山真帆2、池田薫1、Sakiat Hossian3、吉越裕介2、D. J. Osborn 4、Gregory F. Metha 4、川脇徳久2,3,5*、根岸雄一5,6*(1. 東京理科大学大学院理学研究科、2. 東京理科大学理学部第一部、3. 東京理科大学研究推進機構総合研究院、4. Department of Chemistry, University of Adelaide, Adelaide、5. 東京理科大学研究推進機構総合研究院カーボンバリュー拠点、6. 東北大学多元物質科学研究所)
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
東京理科大学理学部第一部応用化学科 講師 川脇徳久
掲載誌:Small
DOI:10.1002/smll.202409910
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 根岸 雄一
Email: yuichi.negishi.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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