2024年 | プレスリリース?研究成果
生体内で複数のイオン濃度を同時に計測できる新技術を開発 ~柔軟性と高感度を兼ね備えた神経イオンプローブで実現~
【本学研究者情報】
〇学際科学フロンティア研究所?大学院医工学研究科
准教授 郭媛元
研究所ウェブサイト
【発表のポイント】
- 熱延伸技術を活用し、生体内でナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、塩素イオン(Cl-)を同時にモニタリングできる柔軟な神経イオンプローブ(注1)を世界で初めて開発しました。
- 神経イオンプローブの高感度?高安定性?高選択性を実現し、人工脳脊髄液(aCSF)環境下で性能を検証しました。
- 脳と身体の相互作用や多様な生理信号測定の新たなプラットフォーム技術として応用可能な技術です。
【概要】
人や動物の体内ではNa+、K+、Cl-などの複数のイオンが共存しており、これらの濃度は精神疾患や神経疾患の理解?治療において重要です。従来の技術では複数のイオン濃度を同時に測定できない、プローブが固く脳内や生体内に挿入しにくいといった課題がありました。
東北大学学際科学フロンティア研究所の郭媛元准教授、同大大学院医工学研究科の吉信達夫教授、呉京宣大学院生らの研究チームは、熱延伸技術(注2)を活用し、ポリマー製のフレキシブルな神経イオンプローブを開発し、人工脳脊髄液(aCSF)環境下でその高い感度、選択性、安定性を確認しました。このプローブはNa+、K+、Cl-を同時にモニタリング可能で、従来の神経デバイス技術が抱える微細化や多機能化の課題を解決できます。これにより、脳や神経疾患におけるイオン動態の解明に寄与することが期待されます。生体適合性の高い柔軟なポリマー製であり、電気生理学的信号の記録も可能であることから、基礎研究や医療診断技術の幅広い応用が見込まれています。
本成果は2024年12月15日に分析化学分野の専門誌Talantaに掲載されました。
図1. 熱延伸技術で実現した柔軟性と高感度を備えた神経イオンプローブ
【用語解説】
注1. 神経イオンプローブ
神経イオンプローブとは、神経系におけるNa+、K+などのイオンの動態を検出?計測するためのデバイスである。このプローブは、神経細胞間や神経細胞内外のイオン濃度の変化を高精度でモニタリングし、神経活動やシグナル伝達の理解を深めるために用いられる。
注2. 熱延伸技術
熱延伸技術で利用できる材料は単一の材料に限定されず、金属?複合材?ポリマーなど多種類を組み合わせることが可能である。この技術は「金太郎飴」を作る方法と似ており、最初に、必要な多種類の材料を組み合わせた大きいプリフォームという成形物を作り、これを加熱しながら引き伸ばすことによって、電気?化学?光などの機能をマイクロからナノレベルで集積した、長さ数千メートルのファイバを作製することができる。
【論文情報】
タイトル:Advancing multiplexed ion monitoring techniques: the development of integrated thermally drawn polymer fiber-based ion probes
著者:呉京宣、雜﨑智沖、吉信達夫、郭媛元
*責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
東北大学大学院医工学研究科 バイオファイバ医工学分野
准教授 郭媛元
掲載誌:Talanta
DOI:10.1016/j.talanta.2024.127249
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
東北大学大学院医工学研究科
バイオファイバ医工学分野
准教授 郭媛元
TEL: 022-795-5768
Email: yyuanguo*fris.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
特任講師 児山洋平
TEL: 022-795-4353
Email: yohei.koyama.e2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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