2025年 | プレスリリース?研究成果
負イオンビームの高周波振動現象の観測 ―ITERや負イオンビーム応用の開拓に貢献―
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻
准教授 高橋 和貴
研究室ウェブサイト
【概要】
磁場閉じ込め核融合研究の国際協力プロジェクトであるITER※1では、マイナス(負)イオンを用いたビーム入射加熱装置の開発が行われています。ところが、負イオンビーム※2はビームが広がってしまいパワーを損失するという問題があり、その原因究明と解決策の開発が急務の課題となっています。核融合科学研究所の永岡賢一教授(兼、名古屋大学大学院理学研究科客員教授)、中野治久准教授(兼、名古屋大学大学院工学研究科客員准教授)、名古屋大学大学院理学研究科の濱嶋大河さん(当時、現、株式会社DENSO)、長岡技術科学大学電気電子情報工学専攻の中本崚也さん(当時、現、株式会社 IHI)、鳴門教育大学大学院学校教育研究科の宮本賢治教授、東北大学大学院工学研究科の高橋和貴准教授、ドイツマックスプランク研究所のUrsel Fantz博士らのグループは、負イオンビームの挙動を詳細に調べる実験を行い、負イオンビームの高周波振動現象を観測しました。そして、この振動現象が、ビームを広げてしまう原因となることを明らかにしました。さらに、この振動現象を抑える方法の発見にも成功しました。この成果は、ITERプロジェクトの重要課題解決に大きな貢献を果たす可能性があるだけでなく、負イオンビームの幅広い応用を可能とする波及効果が期待されます(特許も出願しています)。
この研究成果をまとめた論文がScientific Reports誌に1月16日に掲載されました。
図1.ビームの振動現象の概要図。負イオンビームはイオン源プラズマ内の高周波の影響を受けて振動するため、ビームが大きく広がることがわかった。
【用語解説】
※1 ITER
フランスに建設中の磁場閉じ込め核融合装置を用いた核融合燃焼プラズマの実験プロジェクト。核融合反応を利用して自己加熱するプラズマを実現する計画。
※2 負イオンビーム
負の電荷をもった粒子の集団が一方向に高速に飛行するビーム。
【論文情報】
タイトル:Response of negative ion beamlet width and axis deflection to RF field in beam extraction region
著者: K. Nagaoka, H. Nakano, T. Hamajima, R. Nakamoto, K. Tsumori, M. Osakabe, M. Kisaki, K. Miyamoto, K. Takahashi, U. Fantz
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 助教 新家寛正
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-024-81334-w
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻
准教授 高橋 和貴
TEL: 022-795-7064
Email: kazunori.takahashi.e8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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