2025年 | プレスリリース?研究成果
研磨を必要としない表面平滑化技術を開発 次世代電子デバイス実装に必要な原子レベルの平滑な接合面を実現
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 電子工学専攻
教授 日暮栄治
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 次世代電子デバイスの実現には、素子にダメージを与えない低温接合が重要で、中でも材料を溶融させずに固体のまま接合する固相低温接合にはナノレベルで平滑な接合面が必須です。
- 従来技術である除去加工による平滑化(研磨)ではなく、小さな素子や複雑な形状に適用可能な、付加加工による平滑化技術を開発しました。
- 電子デバイス実装に広く用いられる金(Au)めっき膜の接合面を、Au薄膜の転写による平滑化技術を開発し、常温接合を達成しました。
【概要】
電子実装技術(注1)は、昨今注目される半導体を含む電子デバイスの製造において要となる技術です。特に接合技術は、電気的?機械的接続や封止など、多くの工程で必要とされる重要な基盤技術です。
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の日暮栄治教授らは、産業技術総合研究所デバイス技術研究部門集積化MEMS研究グループの倉島優一研究グループ長らの研究グループならびに関東化学株式会社の清水寿和副主席研究員らのグループと共同で、表面が粗いAuめっき膜を平滑なAu薄膜に重ねる付加的な平滑化手法を新たに開発しました。具体的には、表面活性化接合(注2)技術とテンプレートストッピング(注3)技術を組み合わせることで、研磨工程を用いずにAuめっき膜を平滑化し、常温接合を実現しました。
本研究は2025年1月18日の学術誌Sensors and Actuators A: Physical のオンライン版に掲載されました。
図1. 本研究で開発した、表面活性化接合とテンプレートストリッピングを組み合わせた技術に基づく平滑化プロセス
【用語解説】
注1. 電子実装技術: 半導体や電子部品を基板に取り付け、電気的接続や機械的固定を行い、電子機器として動作可能な形態にする技術。特に、Auめっき膜を用いた低温接合や平滑化技術のように、接合温度や素子への負荷を低減しつつ高い信頼性を確保するプロセスは、次世代の小型?高性能電子機器の実現において重要な役割を果たす。
注2. 表面活性化接合: アルゴンイオン等のイオン衝撃により接合面の吸着層や酸化膜を除去し、固体表面が本来持っている凝着エネルギーを利用して、固体同士を常温ないし低温で接合する技術。
注3. テンプレートストリッピング: 平滑なテンプレート上に堆積させた金属膜をテンプレートから剥離することで、テンプレート表面と同等に平滑な面を得る手法。
【論文情報】
タイトル:Room temperature bonding of Au plating through surface smoothing using polyimide template stripping
著者:Kai Takeuchi, Shogo Koseki, Le Hac Huong Thu, Takashi Matsumae, Hideki Takagi, Yuichi Kurashima, Takahiro Tsuda, Tomoaki Tokuhisa, Toshikazu Shimizu, Eiji Higurashi*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科電子工学専攻 教授 日暮栄治
掲載誌:Sensors and Actuators A: Physical
DOI:10.1016/j.sna.2025.116211
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻
教授 日暮 栄治
TEL: 022-795-7057
Email: higurashi*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています