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筋肉は正常なタンパク質分解によって維持されている ペプチド分解酵素のタンパク質品質管理機能を発見

【本学研究者情報】

〇産学連携機構イノベーション戦略推進センター 特任教授 永富良一
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 筋細胞においてタンパク質が分解されるにあたっては、多くのペプチド分解酵素(1)が働きます。
  • ペプチド分解酵素の一種、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPs) (2) が筋細胞におけるタンパク質の品質管理を行っていることを明らかにしました。
  • MetAPsの機能を阻害すると、タンパク質翻訳(3)の異常や小胞体ストレス(4)を起こしてタンパク質の品質が劣化し、細胞増殖能力に深刻な影響が及ぶことがわかりました。
  • 骨格筋の減少を伴う筋肉減少症サルコペニア(5)など、運動機能低下への効果的な対策につながることが期待される成果です。

【概要】

 骨格筋は日常生活や運動を司る人体最大の組織です。骨格筋の維持には筋細胞を構成するタンパク質の合成と分解のバランスが重要であり、タンパク質分解にはさまざまなペプチド分解酵素が働きます。ペプチド分解酵素はタンパク質の分解だけでなく、さまざまな細胞の調節機能を担っているとされていますが、その機能の全容については十分に解明されていません。

 東北大学産学連携機構イノベーション戦略推進センターの永富良一特任教授、国士舘大学大学院救急システム研究科の長名シオン講師らの研究グループは、細胞内におけるペプチド分解酵素の一つであるメチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPs)が、タンパク質分解を通じて骨格筋細胞のタンパク質の品質管理を行っていることを発見しました。タンパク質の品質劣化は小胞体ストレスにつながり、細胞の増殖を抑制することがわかりました。今後、他のタンパク質分解酵素の細胞周期や形態形成の制御も含めて骨格筋量の調節機構の全体像をとらえることで、主に加齢などによって生じる筋肉減少症(サルコペニア)などの運動機能低下に対する効果的な対策につながることが期待されます。

 本研究成果は、2025年1月13日細胞ダイナミクスに関する専門誌Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Cell 雷速体育_中国足彩网¥在线直播 (電子版)に掲載されました。

図1. 本研究の概要図
MetAPsは細胞内のペプチド分解酵素の一つである。筋細胞におけるMetAPs阻害はタンパク質の翻訳異常に伴う小胞体ストレス増加を引き起こし、細胞増殖能力を低下させる

【用語解説】

注1.ペプチド分解酵素:ペプチドとは2つ以上のアミノ酸が鎖状につながった分子の総称で、それらを最小単位のアミノ酸へと分解する酵素群です。

注2.メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPs):細胞内におけるペプチドをアミノ酸へと分解する酵素の一つであり、主にメチオニンを標的とします。

注3.タンパク質翻訳:遺伝子配列をアミノ酸配列に変換してタンパク質を合成する過程のことです。

注4.小胞体ストレス:タンパク質の合成や折りたたみを行う細胞内の小胞体が正しく機能できない状態を意味します。

注5.筋肉減少症サルコペニア:加齢や疾患により筋肉量が減少することで、全身の筋力低下および身体機能の低下が起こることを意味します。

    【論文情報】

    タイトル: Inhibition of methionine aminopeptidase in C2C12 myoblasts disrupts cell integrity via increasing endoplasmic reticulum stress
    (C2C12筋芽細胞におけるメチオニンアミノペプチダーゼ阻害は小胞体ストレスを増加させることで細胞機能性を破綻させる)
    著者: Shion Osana*, Cheng-Ta Tsai, Naoki Suzuki, Kazutaka Murayama, Masaki Kaneko, Katsuhiko Hata, Hiroaki Takada, Yutaka Kano, Ryoichi Nagatomi*
    *責任著者:
    国士舘大学大学院救急システム研究科 講師 長名シオン(おさな しおん)
    東北大学産学連携機構 特任教授 永富良一(ながとみ りょういち)
    掲載誌: Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Cell 雷速体育_中国足彩网¥在线直播誌
    DOI:10.1016/j.bbamcr.2025.119901

    詳細(プレスリリース本文)PDF

    問い合わせ先

    (研究に関すること)
    東北大学産学連携機構
    イノベーション戦略推進センター
    特任教授 永富良一
    TEL:022-752-2191
    Email:ryoichi.nagatomi.c4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

    (報道に関すること)
    東北大学産学連携機構
    イノベーション戦略推進センター事務支援室
    電話:022-752-2188
    Email:promo-innov*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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