2025年 | プレスリリース?研究成果
光ファイバケーブルを活用した海域?地下構造のイメージング手法を開発 ─ 海域における地震波速度構造の詳細把握の実現 ─
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科
附属地震?噴火予知研究観測センター
特任研究員 福島駿(ふくしましゅん)
センターウェブサイト
【発表のポイント】
- 光ファイバセンシング技術の一つである分布型音響センシング(Distributed Acoustic Sensing:DAS)(注1)を用いた地震波探査により、海底下の地下構造の詳細把握が実現しました。
- DASの高密度観測を生かした新手法により、岩手県三陸沖における地震波速度構造の空間的な不均質構造が明らかにできました。
- 本手法は、海底下の構造モニタリングや資源探査、地球科学的な研究の理解への応用が期待されています。
【概要】
近年、光ファイバをセンサーとして振動などを捉えるDASが地震観測などに用いられるようになってきました。この技術は、光ファイバ上を数m?数十mという超高密度の観測点間隔で約100 kmほどの距離まで観測することが可能です。また、海底に設置されている海底光ケーブルでDAS観測を実施することで、海底における地震動の稠密観測を実現することが可能です。海底での地震動の稠密観測は,地震活動のモニタリングや地下構造のイメージングなど,多目的に応用されるようになってきています。
東北大学大学院理学研究科附属地震?噴火予知研究観測センターの福島駿特任研究員らは、東京大学地震研究所篠原雅尚教授、京都大学防災研究所伊藤喜宏教授と共同で、海底に敷設された光ファイバケーブルを活用した新しい地下構造のイメージング手法を確立しました。広範囲(50-100 km)かつ稠密(約5 m間隔)なデータが取得できることが特長で、得られるDASデータを解析することで、これまでの技術と比べて格段に高い空間分解能で海底下構造を推定できると期待されます。
本研究では、三陸沖に敷設された海底ケーブルを活用したDAS観測により得られた制御震源(注2)を用いた地下構造探査のデータを解析しました。その結果、DASで得られるデータが、海域における地下の構造を詳細に解明する上で有効であることを示すことでき、三陸沖の海域の浅部堆積層内に強い空間的な不均質構造がみられることを明らかにできました。このように地下の地質構造を詳細に把握することができる手法が開発されたことは、地震波の伝播の仕方や地形の成り立ちの理解をはじめとする地球科学的研究のみならず、二酸化炭素回収?貯留(Carbon Capture and Storage :CCS)(注3)などの工学的分野での研究開発にも大きく貢献すると期待されます。
本成果は、5月25日に科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1. (A)この図は、本研究で行った制御地震探査の位置を示しています。黒い線は、今回の観測で使用した海底光ファイバケーブルの位置を示しており、青い線はDAS観測を行った範囲を表しています。また、緑の線はエアガンを使って地震波を発生させた海域の範囲を示し、赤い線は、そのデータからP波速度構造を推定した位置を示しています。
(B)この図は、海岸からの距離が26.0kmの地点でDAS観測点によって記録された、地震波形をエアガンとDAS観測点間の距離ごとに並べた波形です。このデータには、8Hzから15Hzの範囲の周波数を通すバンドパスフィルターが適用されており、各観測点の波形は、それぞれの最大振幅で正規化されています。記録からは、DASを使った観測でも、エアガンで発生させた地震波の波形を明瞭に捉えられていることが確認できました。
【用語解説】
注1. 分布型音響センシング(Distributed Acoustic Sensing:DAS):光ファイバケーブルに沿ってレーザー光を送り、微小な歪みによって生じる反射光の変化を検出することで、数m間隔で地震動を連続的に計測できる観測技術です。
注2. 制御震源:エアガンなどの地震波を発生させる装置のことです。
注3. 二酸化炭素回収?貯留(CCS: Carbon Capture and Storage:CCS):大気中の CO?を分離?回収し、地下深部へ圧入して長期的に貯留する地球温暖化対策技術の一つです。
【論文情報】
タイトル:Enhanced P-wave velocity imaging by marine airgun-source seismic surveys with Distributed Acoustic Sensing
著者:福島駿*、日野亮太、東龍介(東北大学)、篠原雅尚、山田知朗(東京大学地震研究所)、伊藤喜宏(京都大学防災研究所)、山下裕亮(京都大学防災研究所、現 宮崎公立大学)、高野洋輝
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 特任研究員 福島駿
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-025-01190-0
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科
地震?噴火予知研究観測センター
特任研究員 福島駿(ふくしま しゅん)
Email:shun.fukushima.a1*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)