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-200℃の低温でも動作するアクチュエータ用の形状記憶合金を開発 宇宙機器や水素利用分野における動作制御の高性能化に期待

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 金属フロンティア工学専攻 
教授 大森 俊洋
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 従来の限界だった-100℃を下回る-200℃の低温でも形状記憶効果(注1を示す銅系形状記憶合金を開発しました。この性質を利用することで、低温で動作するアクチュエータ(注2を実現できます。
  • 開発した形状記憶合金をアクチュエータとして用いた機械式ヒートスイッチ(注3を試作し、-170℃で動作することを実証しました。
  • 低温域で大きな仕事量(注4が得られるアクチュエータが実現可能となり、宇宙機器などでの利用が期待されます。

【概要】

電気や熱を機械的エネルギーに変換するアクチュエータには、用途に応じてさまざまな機構や材料があります。特に、宇宙機器や水素利用などの分野では、-100℃以下の低温でも正確に動作し、高出力を発揮できるアクチュエータ用材料が求められています。しかし、これまで実用的な材料はありませんでした。

このたび、東北大学大学院工学研究科の大森俊洋教授らは、銅、アルミニウム、マンガンを主成分とする合金が-200℃でも形状記憶効果を示すことを発見し、さらに、この合金をアクチュエータとして組み込んだ機械式ヒートスイッチが-170℃で動作することを確認しました。低温下での高性能アクチュエータの実用化が期待されます。

本研究は、東北大学大学院工学研究科の佐藤駿介大学院生(当時)、大森俊洋教授、貝沼亮介教授、許皛准教授、同大学学際科学フロンティア研究所の許勝助教、岩手大学理工学部の戸部裕史准教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の澤田健一郎主任研究開発員と佐藤英一教授、国立天文台先端技術センターの東谷千比呂研究技師、東京都市大学総合研究所の中川貴雄特任教授、京都大学大学院工学研究科の荒木慶一教授の共同研究により実施されました。

本研究成果は、2025年7月16日18時(日本時間)に科学誌Communications Engineeringに掲載されました。

図1. 一定応力下で冷却?加熱中のCu-Al-Mn-Ni形状記憶合金の歪みの変化。

【用語解説】

注1.形状記憶効果:変形した材料を加熱すると元の形状に戻る性質。この性質を持つ金属材料が形状記憶合金。

注2. アクチュエータ:電気や磁気などのエネルギーを機械的エネルギーに変換する装置。

注3. 機械式ヒートスイッチ:物理的な接触?非接触により断熱状態と熱伝導状態を切り替えるデバイス。

注4. 仕事量:応力と歪の積が単位体積あたりの仕事。ここでは、アクチュエータの出力できるエネルギー密度に対応する。

【論文情報】

タイトル:Shape memory alloys for cryogenic actuators
著者:Shunsuke Sato, Hirobumi Tobe, Kenichiro Sawada, Chihiro Tokoku, Takao Nakagawa, Eiichi Sato, Yoshikazu Araki, Sheng Xu, Xiao Xu, Toshihiro Omori*, Ryosuke Kainuma
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 教授 大森 俊洋
掲載誌:Communications Engineering
DOI:10.1038/s44172-025-00464-9

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 大森 俊洋
TEL: 022-795-7322
Email: omori*material.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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