2025年 | プレスリリース?研究成果
2024年能登半島地震の断層活動を地殻応力場で推定 ─日本全域での地震発生可能性の評価で、減災への貢献に期待─
【本学研究者情報】
〇附属地震?噴火予知研究観測センター 客員研究者 田上綾香
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 2024年能登半島地震発生前の地震データを用いて地殻(注1)応力場(注2)を推定し、能登半島地震の断層面のすべりやすさ評価を行なった。
- これまでに提唱されている複数の断層モデルは能登半島地域の地殻応力場に対してすべりやすい状態を示した。
- 地殻応力場と断層モデルの両方を用いた断層のすべりやすさ評価を日本全域に適用することで地震発生の可能性評価、地震災害の減災への貢献が期待される。
【概要】
一般的に地殻応力場に対してすべりやすい断層がすべりや内陸型地震(注3)を発生させると考えられています。しかし、地下に存在する流体や既存の古い断層により、応力場に対してすべりにくい形状の断層で約1500万年前に地震が発生した事例が日本海側で確認されています。
東北大学大学院理学研究科 附属地震?噴火予知研究観測センターの田上綾香客員研究者と岡田知己教授、ニュージーランド?ヴィクトリア大学ウェリントンのMartha K. Savage教授らの研究グループは、2024年能登半島地震発生前の地震データを用いて能登半島地域の地殻応力場を推定し、これまで推定された断層モデルに対して応力に基づく、すべりやすさの評価を行いました。その結果、各断層モデルは能登半島地域の地殻応力場に対してすべりやすい状態にあり、2024年能登半島地震は応力場に対してすべりやすい条件で発生した可能性を見出しました。
地震発生前の地殻応力場と断層モデルによりすべりやすいと評価された断層が実際に活動したことから、応力を用いた断層のすべりやすさ評価を日本全域に適用することで、それぞれの断層における地震発生の可能性評価、地震災害の減災への貢献が期待されます。

図1. 推定した能登半島地域の地殻応力場。左図はメカニズム解の分布とサブエリアの範囲を示す。地図の色は標高と海底面の深さ、メカニズム解の色と大きさは深さとマグニチュードを示す。右図は本研究で推定した地殻応力場。「All Data 」はこの地域の全データから推定した結果。「West 」は東経137度以西のデータから推定した結果、「East 」は東経137度以東のデータから推定した結果を示す。赤、緑、青の丸はそれぞれ主応力方向(S1>S2>S3)を示す。パステルカラーの赤、緑、青の円は、それぞれS1、S2、S3の誤差を示す。黒線と灰色の扇形は、それぞれ水平圧縮方向の最適値と誤差を示す。
【用語解説】
注1. 地殻:地球表面の厚さ数10 kmの岩石層のこと。
注2. 応力場:物体の内部にかかる応力の大きさや向きのこと。
注3. 内陸型地震:プレート運動により陸側のプレート内部に力が加わりひずみが発生する。このひずみを解消する際に発生する地震。
【論文情報】
タイトル:Evaluation of the favorability of faults to slip: the case of the 2024 Noto Peninsula earthquake
著者:Ayaka Tagami, Tomomi Okada, Martha K. Savage, Calum Chamberlain, Toru Matsuzawa, Ryotaro Fujimura, Kazuya Tateiwa, Keisuke Yoshida, Ryota Takagi, Syuutoku Kimura, Satoshi Hirahara, Taisuke Yamada & Yusaku Ohta
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 客員研究者 田上綾香
掲載誌:Earth, Planets and Space
DOI:10.1186/s40623-025-02235-4
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科
附属地震?噴火予知研究観測センター
客員研究者 田上 綾香(たがみ あやか)
Email: ayaka.tagami.e4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL: 022-795-6708
Email: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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